パーフェクトフェロウシャフルには、すばらしい原理があります。その中でも、私が選んだ重要視すべき6つを紹介したいと思います。それぞれに面白いメカニズムを持っていますので、知っていて損はしません。ところで、私はパーフェクト・フェロウシャフルをすすめているのではありません。これらの原理を知って、リバース・フェロウ等の別な方法で操作することをお勧めしたいわけです。
原理の紹介の前に、インとアウトの意味を理解してもらっている必要があります。インのフェロウシャフルとは、トップカードがシャフル後にはトップにならないもので、二枚目になります。インのリバース・フェロウではトップカードが中央にくることになります。アウトのシャフルとは、トップカードがシャフル後もトップに保たれているものをいいます。 |
18-35 (52枚のアウトフェロウにて) |
1940年代のHugardとBraue共著によるExpert Card Techniqueに初めて発表されました。パーフェクトフェロウを何回繰り返しても、18枚目と35枚目のカードに関しては、その位置が入れ替わるだけというものです。
つまり、最初18枚目にあったカードは一回のアウトフェロウにより35枚目へ移り、二回目のアウトフェロウにより18枚目にもどるわけです。これを応用したカードマジックが多数発表されました。しかしどれもパーフェクト・フェロウの繰り返しが必要なわりには、たいした現象がおこりません。ところが、1993年発行のPeter DuffieのCard Slectionには、52枚以外の場合はどのようになるのかを報告されています。
その中には、使えそうだと思った物がありました。8枚使用の場合の3枚目と6枚目の入れ替わりと、14枚使用の場合の5枚目と10枚目です。このような少ない枚数であれば、リバース・フェロウが使えて実用度がアップするからです。 |
もとの配列にもどる回数と逆の順になる回数 |
今回のコラムの最初にふれましたように、552枚でアウトのパーフェクト・フェロウを繰り返すと、8回で元の配列にもどります。しかし、インのシャフルの場合は52回繰り返す必要があります。逆の順にするには26回のインのシャフルが必要です。結局、まったく実用的ではないとしかいいようがありません。
実践で使用するには、もっと少ない回数のほうが良いわけです。2回でもどるのは4枚使用した場合のアウトのシャフルだけです。結局、フェロウシャフルを行うというよりもリバース・フェロウの方が現実的です。リバース・フェロウの場合でも、同じ四枚で同様のメカニズムがおこるからです。三回で戻るのは、6枚のインと8枚のアウトの2つだけです。そして、4回必要となるのは、4枚のイン、6枚のアウト、14枚のイン、16枚のアウトの4つの場合となります。繰り返しは4回までが限度と云えるでしょう。
これに対して逆の配列にするには、インのシャフルの場合にしかないわけですが、4枚の場合は2回、8枚の場合は3回、16枚では4回必要となります。
少ない枚数でリバース・フェロウの繰り返しも少ないマジックの作品として発表されているのは、2001年12月に発行された厚川昌夫氏の「カードの島」(マジックランド発行)の中に解説された「整理好き」があります。それ以外には、1993年発行の私の作品集「スーパーセルフワーキング」 の中の「逆さにしないで」があります。 |
トップカードをX枚目へ持ってゆくためのフェロウシャフルの回数 |
X-1を二進法で表示して、それに従ってインとアウトのシャフルを行うと、X枚目へもって行くことができます。1957年にこの面白い原理を発表したのはAlex Elmsleyです。しかし、これも数回のシャフルの繰り返しが必要となるために実践的とは云えません、少ない枚数でリバース・フェロウを行うほうが実践的です。
ところが、リバース・フェロウの場合には上記のことが行えません。そのかわりに逆の現象であるX枚目のカードをトップにもってゆくことが可能となります。これもX-1を二進法表示にかえて、それに従ってインとアウトのリバース・フェロウを行うとトップへ移動させることができるわけです。もっと楽に行える方法として、リバース・フェロウして分割したパケットを客のカードがある方を客に指摘してもらい、上方になるように重ねることを繰り返すだけでもトップへ移すことができます。
ところで、例外としておもしろいメカニズムがあります。二進法のかなめの数である、4、8、16の枚数を使用した場合に限っては、X枚目のカードをトップへもってゆくようにリバース・フェロウを行うと、トップカードは自動的にX枚目へ移動することとなります。これらの原理を使った面白い作品がいくつか発表されています。 |
鏡像現象(原理) |
パーフェクト・フェロウやリバース・フェロウを繰り返してトップカードがトップからX枚目へ移動した時、ボトムカードもボトムからX枚目へ移動します。つまり、トップ側からの変化とボトム側からの変化が鏡像のようになるわけです。
ところで、デックやパケットのトップをボトムからの順番を鏡像の関係にセットしたスタックのことをスティ・スタック(リフレクテッド・スタック)と予備ます。例えば、 ABCDDCBAのようにセットすることです。このスティ・スタックを使った原理を1957年にRusduckが発表しました。このスタックでフェロウシャフルやリバースフェロウを行うと面白いことがおこります。これに関した作品も多数発表されていますが、実用的な作品となると限られてきます。フェロウシャフルであれば一回、リバースフェロウであれば少ない枚数で3〜4回までの繰り返しで行える作品であれば、実用的と云えそうです。 |
ペネロペ原理 |
この名前のいわれはギリシャ神話からきていますが、そのことについてはここでは割愛します。1957年にはAlex Elmsleyによりすでに考えられていた原理ですが、一部のマニアの間では知れ渡っていても、正式に文章で発表されたのは、1988年になってからです。
デックより数枚のカードを取ってもらい、残りのデックをパーフェクト・フェロウすると、客が取り去った枚数と同数枚目に客のカードや特定のカードを出現させることが出来ます。これは一回のパーフェクト・フェロウで行えるため、そのままでも実用的です。しかし、フェロウシャフルを使わなくても、トップとボトムカードを同時にとってゆくミルク・ビドルを行えばセルフワーキングマジックとして行えます。これは1988年までに数作品がいろいろな一により発表されていますが、もっとも私の気に入っているのはダイ・ヴァーノンのランデブーフォースです。1986年のマジカルアート・ジャーナルの日本語版第1巻8号か1988年のVernon Chronicles Vol.2に解説されています。 |
インコンプリート・フェロウ |
1963年にマルローが発表した方法です。これを原理と言って良いのかは別として、面白いメカニズムが働きます。
インコンプリートとは、フェロウシャフルを完成させずに噛み合わせた状態から引き抜いてしますことからつけられた名前のようです。パーフェクト・フェロウを行っても、少しだけ紙合わさった状態でとめます。客にピークさせて覚えてもらったカードが、結局ボトムから27枚目(または26枚目)にもってくることができます。サイステビンス・システムにセットしておけば、ボトムカードと同色同数のカードが客のカードであることもわかるわけです。
いろいろな応用が発表されていますが、その多くは、さらにもう一回パーフェクト・フェロウを繰り返す作品です。それは私の好みではありません。なお、インコンプリート・フェロウは、残念ながら、リバース・フェロウ等の他の方法での代用は出来ません。 |