このマジックは私にとって、本格的にカードマジックと取り組み始めた最初の頃に、もっともよく演じたマジックです。面白いメカニズムが働いて、自動的に4Aを取り出してゆけることに魅力を感じていたのだと思います。 |
長い間、この作品の原案者はダイ・バーノンであると思われていました。本当の原案者はハーブ・ザロー(Herb Zarrow)であったのです。そのことが明らかにされたのは28年もたってからのことです。スティーブ・ミンチの”The Vernon Chronicles Vol.3"(1989年発行)により、そのことがはっきり指摘されました。 |
原案であるザローの方法や、それに近い高木重朗氏の方法は、そのままで演じて特に支障となる点はありません。しかし、出来れば改善したい点があります。気になる点があるからです。そのことを述べさせて頂く前に、日本においてはなじみのある高木重朗氏により解説された方法の現象の部分をまず最初に紹介させて頂きます。 |
このマジックの3つの問題点の中で、良い案が出ていないのが最初のセットの部分です。そういった意味でも、私がもっとも改案したい部分はセットするための操作です。4Aをトップ等の特定の位置へ密かに集めることは割合容易く行えます。しかし、問題となるのが数枚のカードを表向ける操作です。不自然な動きになりがちです。これを少しでも改善させる方法はないかと考えたわけです。ザローやニック・トロストの解説では、表向けるために同じ方法が採用されていますが、少し強引な方法です。右手でトップの数枚を持って、そのすぐ下の数枚をすばやく表向けながら、右手のカードをデック上へもどす方法です。 |
最後にもう1つ、全く異なったタイプの改案作品を紹介したいと思います。現象は本来の4Aを取り出すだけのものです。しかし、全く違った作品のようにも見えてしまいます。その理由は、前半でスロップ・シャフル様の操作を行って、表裏まざっていると思われているデックでエメラルド・エーセスを行っているからです。スロップ・シャフルにより生じる現象は示しません。エメラルド・エーセスによる4Aの取り出しのみの現象です。しかし、スロップ・シャフル様の操作のおかげで、3つの問題のすべてがきれいに解決されています。簡単にセットが出来、表向きに広げる操作が意味のある行為になり、そして、残ったパケットに表裏まざっていることが当然の状態になる為です。しかし、むずかしい部分は何もありませんので、初心者でも容易く行えます。 |
今回も長い報告になってしまいました。最後の部分では、私の改案も紹介させて頂きましたので、さらに長くなってしまいました。ただ、これらに関しては考え方の紹介が目的でしたので、簡略化した解説だけにとどめました。もしかしますと、原案に近い作品の方がシンプルで分かりやすく一般受けするかもしれません。原案には原案の良さがあります。しかし、新しさや、自分らしさを含めた作品づくりの必要性も感じています。 |