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コラム

第10回 マジック(2023.10/6 up)

こないだの土日はワールドカップバレー 2023を諦め、UGMの「マジックコンベンション 2023」に行ってきました。山本勇次氏の追悼もかねて、衣装、写真、印刷物が展示されており、とても興味深かったです。個人的には、氏の考案作品の一覧表のようなものがあるとよかったと思いました。

海外からは、台湾からコンテスタントも含めて何人も参加しており、今後の成長が期待されます。韓国からは以前より減った印象でした。コンテストには20名が出演しましたが、その人数でも見ていて疲れましたので、とてもFISMに行こうとは思えませんね(FISMは150組)。

コンテストなので照明の指定が細かく出来ないためか舞台は明るく、ブラックアートが丸見えの演技が多かったです。それらを前から2列目の審査委員がどう評価するのかと思っていましたが(見えたまま審査するのか、後ろの席からなら見えないだろうと判断するか)、フラッシュは減点ということで、その手の演者は殆ど全滅でした(若い人たちの発表会の観客は手品をやっている人が主体なので、種が見えるのはお約束な風潮がありますが、最近は露骨すぎる感じがします)。又、今回も演目に偏りがあり、カラー・カードや玉を使ったもの、小芝居風の演技、台湾からの演者にはライトを使ったものが多かったです。

コラム連載10回記念は、そのものズバリ、「マジック」です。まずは予告編から。


『マジック』

マジック21

原題: Magic
監督: Richard Samuel Attenborough
脚本: William Goldman
原作: William Goldman
出演: Anthony Hopkins (Corky Withers), Ann Margret (Peggy Ann Snow), Burgess Meredith (Ben Greene), Ed Lauter (Duke)
マジック・コンサルタント: Michael Bailey, Lewis Horwitz
配給: 20世紀フォックス
公開: 1978年
上映時間:107分
製作国:アメリカ

「羊たちの沈黙」のレクター役でブレークしたアンソニー・ホプキンスが腹話術師を演じるサイコ・サスペンス。映画はそれほど話題になりませんでしたが、若い頃から舞台俳優として知られていたホプキンスの鬼気迫る迫真の演技は「サイコ」のアンソニー・パーキンスのようで、その後のレクターに通じるものがあります。

手品に興味のある方は押さえておくべき1本でしょう(因みに、アンソニー・ホプキンスは「羊たちの沈黙」でアカデミー賞を獲りましたが、トータルで16分しか出ていないのに主演男優賞って凄くないですか?)。原作、脚本のウィリアム・ゴールドマンと言えば、「明日に向かって撃て」「大統領の陰謀」でアカデミー脚本賞を受賞した脚本家で、アマチュア・マジシャンでもありました(タネンに時々、ネタを買いに来ていたそうです)。他には映画「マラソンマン」などの原作も書いています(因みに、1970年代後半は「オデッサファイル」「ブラジルから来た少年」など、ナチの残党を題材にした映画がいくつか作られましたが、中でも「マラソンマン」は傑作で、最近も見直しましたが、先が分かっていても手に汗握ってしまいます。元ナチ党員ゼル博士を演じるローレンス・オリヴィエが「Is it safe?(安全か?)」と繰り返し質問するところは映画史上に残る名シーンです)。


話を戻して、「マジック」のパンフレットには、高木重朗氏が解説を書いています。映画ではカード・マジック、Do as I doを見せることで心が通っていると女性に思わせるシーンが出てきますが、高木氏が入院した時に看護師に見せた手品で1番受けたのはDo as I do(ハリー・ロレインの「Automatic Mind Reading」)だったそうです。

冒頭、カーディシャンとして売り出し中のコーキーはスターダストのアマチュア・ナイトで芸を披露します。デックからAがライジングしてくるトリックを見せようとしますが、観客が注目してくれないのでぶち切れます。1年後、ファッツという名の人形を操る腹話術師となって再び同じクラブに現われました。これが大受けし、ベン・グリーンというエージェントがつくまでになります。

「マジックなんか子供番組にも出せんよ」と言ったことに対するベンの台詞「ポイントは“おとり”さ。そっちに客の目を集めさせる。タイミング良く。テレビでマジックがウケないのは、カメラのバカがおとりを写してないからだ」。

9分、ショーでのコーキーの演技。手から手へのデックのスプリング。「ダイヤの10はあなたのものです」と言いながらクラシック・フォースで客にダイヤの10を引かせます。フラリッシュとしてシャーリア・パスを行います。ファッツが持っていたカードが他のカードに変わっています。原作では、デックのトップに4枚のAがあり、その上に客の選んだカードを一旦置き、トップ・カードを取り上げたように見せて、5枚を1枚のようにして取り上げるテクニックを練習をするシーンがあります。

映画でもファッツが「5枚取りをするぞ」と野次を入れています(字幕では単に「インチキが始まるぞ」という訳)。22分、テレビ番組へ出演の声が掛かりますが、契約に必要な健康診断を受けたくないため、雲隠れします。田舎であるクロッシンジャーへ向かうタクシーの中で、左手でコイン・ロールをします。36分、コーキーが学生時代に思いを寄せていたペギーと湖畔を散歩するシーンで、ペギーにこれで何かやって見せてと石を渡され、フレンチ・ドロップで消すことを2回行います。

コーキーの師匠であるマーリンとその妻はインチキ読心術をやっており、妻が入院した時には心を読むことができたという話から、コーキーとペギーもそれを試みます。バイシクル・ライダー・バックの赤裏と青裏を取り出し、Do as I doを行います。ペギーに好きな方のデックを選ばせ、シャッフルし、1枚のカードを覚えてからデックを交換し、自分が覚えたカードを探します。しかし、抜き出したカードは一致していません。直ぐに成功しないところが真実味を与えます。もう1度繰り返します。お互いにデックをシャッフルし(コーキーはボトム・カードをピーク)、交換します。お互いがデックから1枚選んで覚えてからトップに戻し、1回カットします。デックを交換し、自分が覚えたカードを探して抜き出すと、今度は一致します(「カードマジック事典」のp.205に載っている方法と殆ど同じ)。このトリックがインチキであることを、後でファッツはペギーに暴露します。90分、考えごとをしながらシャーリア・パスを行います。

ここからはネタバレになりますが、


マジック2

後半に「チャイルド・プレイ」的なホラー映画のシーンがあり、人形が何故動くのか?と疑問に思った方もいると思います。画面ではファッツが刺していますが、コーキーとファッツは同一人物ですので、実際に殺したのはコーキーだと私は解釈しています。ところで、ネットなどで小説や映画のネタばらしをする際にはここからネタバレだと断りますが、何故、手品のネタばらしをする時には断らないのでしょうか?以下の4つからお選び下さい。

1.手品の場合、ネタばらしとは思っていないから
2.ネタばらしと思っているが、これからすると断れば悪いことをしていると認めることになるから
3.手品のネタばらしの場合、それが話の中心になるのは分かりきっているからあえて断らない(それに対して映画などの解説では一般には、“ここからネタバレ”という一部だけのものが多い)
4.手品のネタばらしをされて種を知ってしまい怒る人はいないから

そうそう、第5回で「マジックボーイ」を解説しましたが、「不思議 Vol.1 No.3」で岡田喜一郎氏が解説を書いていたのを紹介し忘れていました。次回はこれまた舞台芸人が登場する「異人たちとの夏」です。

参考文献

Harry Lorayne:「私のまねをしてごらん③」『カードマジック事典』(東京堂出版, 1983) p.207

William Goldman:『マジック』(早川書房, 1975)

岡田喜一郎: 「映画マジックボーイ」『不思議』(マジックマガジン社, 1982)p.26

栗田研:「映像の魔術 マジック」『Four of a Kind Vol.14 No.』(チェシャ猫商会, 2010) p.455

高木重朗:「私のまねをしてごらん①」『カードマジック事典』(東京堂出版, 1983) p.205


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