このコラムは100回連載予定で、気づいていないと思いますが、その時に紹介したものと何らかの関連付いたものをその次の回に紹介しています。100本は最初から決めてあるので、原稿を落とすことはないでしょう。フレンチのメルマガでは毎回は紹介されませんが、毎週金曜日に更新されていますので、新商品紹介を見た後についでにお読み下さい。因みに、「Four of a Kind」に過去に載せたものに加筆してこのコラムに再録しているものもありますが、今後、紙面の方に掲載するものをここで紹介する予定はありません。
ワールドカップバレー 2023が終わり、男子はパリ オリンピック出場権を得られました。因みにワールドカップと言えば、昔はサッカーではなく、バレーの大会のことを指していました。以前は、客を呼ぶため、サポーターであるジャニーズのグループが応援歌を会場で歌っていましたが、今回は性加害問題で起用が取りやめになりました。ジャニーズ目当てで見に来て、歌が終わると帰ってしまったり、バレーを観たい人がチケットを入手しにくかったことが問題になっていましたが、最近は選手でもイケメン揃いなので、バレオバ(バレーボール好きのおばさん)が増え、逆に以前よりチケットが入手しにくくなり困ったものです。何故、ここで関係ない話をするんだ?と言うかもしれませんが、ちゃんと手品に繋がります。確か2015年のワールドカップですが、Sexy Zoneがイリュージョン・マジックで登場して歌いました。盆踊りの櫓のようなところに彼らが現れるという現象です。その後、マジオバ(マジック好きのおばさん)が手品見たさにバレーの試合に押しかけた...、ということはありませんでした。では、いつものように予告編から。
原作: 山田太一
監督: 大林宣彦
出演: 風間杜夫(原田英雄), 片岡鶴太郎(原田英吉), 秋吉久美子(原田房子), 名取裕子(藤野桂), 北見マキ(奇術師)
配給: 松竹
公開: 1988年
上映時間:110分
妻と離婚した人気シナリオ・ライターが体験した、既に亡くなったはずの彼の両親、そして妖しげな若い恋人との奇妙なふれあいを描いたファンタジー映画。原作はTVドラマ「ふぞろいの林檎たち」などで知られる山田太一で、新潮社によって設立された山本周五郎賞の第1回受賞作品。
冒頭20分、原田英雄は12歳まで住んでいた浅草へ足が赴き、ぶらりと入った浅草演芸ホールの寄席では、北見マキが本人の名で舞台に立っています。但し、シルク・ハットにタキシード、髭を生やし、いかにも一般の人が考えそうな手品師のイメージです。ファイヤー・トーチがケーンになる、ケーンが花になる、モンゴリアン・シルク、紅白のシルクを各々の手に持っていて(片方が結ばれているので、「結び目の移動」をしたのでしょうか?)、それらをシルク・ハットに入れ、兎を出す、小型の中華セイロのような筒から、野球のボールとグローブを出す、チェンジング・バッグからラメ・テープを出す、筒からアイスクリームが盛られたグラスを3皿出す。原田が、客席にいる男が死んだ父親に似ていて驚くくだりで挿入された短いマジック・シーンです。ケーンのシーンは実際に演じていますが、プロダクションするところでの改めのシーンは無く、取り出すところだけです。又、シルクをシルク・ハットに入れて兎を出すところもカットが切り替わっています。
片岡と秋吉の演技も良く、終盤まではしんみりと感動させるドラマで、お勧めします。ただそこまでと、最後にいきなり出てくるホラー映画的な特撮シーンとのギャップが大きく、うまく繋げていない感じがします。大林監督はCMディレクター時代に身につけた?独特の映像感覚を持っており、デビュー作「HOUSEハウス」では派手でポップな色彩が若者に受けたのですが、この映画ではやりすぎ感が出たと思ったのは私だけでしょうか?因みに、何度も舞台化され、ラジオ・ドラマでも放送されました。又、最近、イギリスを舞台に再映画化され、「異人たち」という題で来春公開されます。
次回は舞台芸人繋がりということで、薬師丸ひろ子の「メインテーマ」を紹介します。
北見マキ:「結び目の移動」,『ステージマジック』(東京堂出版, 1993) p.65
栗田研:「映像の魔術 異人たちとの夏」『Four of a Kind Vol.10 No.3』(チェシャ猫商会, 2006) p.328
山田太一:『異人たちとの夏』(新潮社, 1987)