10月13日のYahoo!ニュースで、YouTubeで種明かしをしている人のインタビュー記事が出ていました。
「同業者からも疎まれている…」手品“種明かし”に賛否、YouTube続ける想いと業界への提言(Yahoo!ニュース)
最近、ネットでは金儲けのための暴露だけでなく、手品の研究の見地からの種明かしも増えて困ったものです(しかも、売りネタの仕掛けまで解説している)。既存の手品の部分を解説しないと、改良点が説明できないので分からなくもないのですが、Google検索でヒットしては問題です。自分の考えたことを認めてもらいたいのであれば、知りたい人にだけPDFで無償配布するなど、他にいくらでも手はあると思いますが?因みに、私は種明かし否定派ですが、ネットで暴露することは単に種が秘密でなくなるという以上に、マジックという世界を壊してしまうことの方が問題だと思います。映画と同様、昔のような輝けるイメージは失われつつあります。
暫く前にアマゾン・プライムの会費が値上げされましたが、プライムに入っていると無料で見られるビデオ自体も有料が増えてきている気がします。007シリーズは長い間、最新作以外は無料でしたが、このコラムを読まれた方が大勢見に行き、これは金になるとアマゾンが考えたのか、9月から有料になっていました!毎週放送しているドラマやアニメには、何日か経つとプライムで見られるものがありますが、そういった中で放送が終了していないものでも途中から有料になったものがあります。せめてそのシーズンが終わってから、有料にすべきでしょう。全く腹立たしいです。テレビだと録画予約をしなければならないので、楽なプライムで見ていたのですが、これじゃあテレビで見ますよね。いつの間にか、有料になったり、視聴出来なくなっているものもあるので、ここで紹介したものがどこで見られるかという情報は載せてもあまり意味が無さそうです。では、予告編から。
原作: 片岡義男
監督: 森田芳光
出演: 薬師丸ひろ子 (小笠原しぶき), 野村宏伸 (大東島健), 財津和夫 (御前崎渡), 桃井かおり (伊勢雅世子)
マジック監修: 2代目引田天功
マジック指導: 平岩白風
配給: 角川春樹事務所
公開: 1984年
上映時間:101分
原作は「スローなブギにしてくれ」「ボビーに首ったけ」の片岡義男による映画のためのオリジナル・ストーリー。主役4人の4角関係のラブ・ストーリー。幼稚園の教員だった小笠原は房総海岸で見習いマジシャンの大東島と偶然出会い、彼と4WDで大阪へ旅に出ます。8分、歩道橋で花籠を背負ったおばあさんとすれ違いざまに、大東島は花籠からシルクを取ります。そして階段のところでシルクを振り、手を離しますが、落ちずに手に戻ってきます。13分、旅の途中、大東島は浜松で泊まった遠鉄ホテルで、ドッキリ・マジック・ショーをやっている知り合いの四日市始から助手を調達してほしいと頼まれます。2人はしゃべりながら電球を擦って灯りを点けます(またもマービン・ロイ?)。16分、四日市のショー、小さいファンがジャンボ・カードのファンになり、胸バラを取って胸に戻ります。そして小笠原が舞台に上げられ、胴切りの助手をさせられます(マーク・ウィルソンが行っていた列車の形をしたもの)。
列車に入る時は、舞台と平行に置かれていた台を縦にすることで本当に演じるように足の入れ替えを隠していますが、出てくるところでの足のすり替えは編集で繋いでいます。大東島が伊勢のタバコに火を着け、マッチが花になります(トリックスの商品「マッチと花」?)。43分、大東島はラジオ番組にゲスト出演します。聞き手がタバコの灰を灰皿に落とすと意味も無く燃え上がります(フラッシュ・コットン?)。44分、大東島は伊勢に再会し、今度は伊勢の方がマッチを花に変えます。57分、伊勢を待つ大東島。待っている間にポケットやネクタイの裏から花を出しますが、伊勢が御前崎とキスするのを目撃して花がしおれます(このシーンが予告編に出てきます)。61分、大東島は沖縄の浜辺で箱に男を入れて蓋をした後、カメラはドリーでバックしながら50メートルぐらい歩いたところで別の箱、"DANGER BOX"が映り、中からは先ほどの男が出てきます。ワンカットなので、箱の裏から抜け、カメラから映らないところを走っていき箱に入ったのでしょうが、不思議さは伝わってきません。64分、砂浜でのマジック・ショー。大東島は箱の中に入って消え、海の中から出てきます。海面には植木鉢の花が横一列に出現します。その後、砂浜の箱から再び出てきます。94分、大東島と小笠原を出迎えたホテルマンたちがぐるっと並んで立ち、順番に毛花を出していきます。これは両手を臍の辺りで合わせ、右手に毛花を隠し持ち、先の部分は上着の前身頃に入れています。ホテルの従業員が台車で料理を運んでいる時に、皿の周りが燃え上がり、蓋を開けるとウサギが2羽出てきます。他にも、車から煙が出るとか、箱を開けると鳩や紙吹雪が出るといったシーンがありましたが、手品とは言えないので割愛しました。
「家族ゲーム」の森田監督だけあって、時間軸で進まず細かく前後しているところや、早口で会話するところなど、変わった演出が見られます。桃井かおりがタバコを吸いながら歌ったり、ラジオのディスク・ジョッキーがタバコを吸いながら仕事をしたりと、時代を感じさせます。アイドル映画とは言え、主役の若い2人の演技の下手さと無理な展開、脈絡の無い手品シーンには疲れます。ワンカットのマジック・シーンも薬師丸などのメイン・キャストが箱に入った方がまだ効果的だったでしょう。クリストファー・リーブの「スーパーマン」でスーパーマンがロイス・レインと別れて窓から飛んでいった後、クラーク・ケントがそこへ尋ねてくるというのをワンカットでやっていましたが、その方が不思議でした(97分)。
次回も舞台芸人繋がりということで、アニメ「斉木楠雄のψ難」を紹介します。
片岡義男:『メイン・テーマ Part 1』(カドカワノベルズ, 1983)
栗田研:「映像の魔術 メイン・テーマ」『Four of a Kind Vol.7 No.4』(チェシャ猫商会, 2004) p.238