コラム | マジック用品グッズショップ（手品ショップ）フレンチドロップ

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第14回劇場版斉木楠雄のψ難(2023.11/3 up)

私はマジックネットワーク7の会友でもあります。現在の活動のひとつは海外マジシャンの来日記録で、12月24日には「第1回 MN7研究会海外マジシャン来日記録の考察」が浜松町のMシアターで開催されます。

今までにどんなマジシャンが来日し、日本のマジック界の流行･発展に寄与したか、その一端を知ることができます。クリスマスということで日が悪いという意見もありましたが、徐々に申込みが増えてきています。来日マジシャンの年表だけでも価値がありますので、是非、ご参加下さい。

『劇場版斉木楠雄のψ難』

監督: 福田雄一
出演: 山﨑賢人(斉木楠雄), 橋本環奈(照橋心美), ムロツヨシ(蝶野雨緑), 内田有紀(斉木久留美), 田辺誠一(斉木國春)
製作: 映画「斉木楠雄のΨ難」製作委員会
放送: 2017年上映時間：97分

このコラムで紹介する映画は４つのタイプに分けられます（映画として見る価値があるかないか、手品シーンを見る価値があるかないか、これらの組み合わせで４通り)。そう言った点からこの映画は、映画としても、手品シーンとしても見ることをお勧めしないものです(山﨑賢人や橋本環奈のファンなら別)。原作ものや続編ものはある程度、集客が見込めるので最近は増えてきました。人気漫画というものは何年も長期にわたって連載されたものが多く、その世界観を２時間ぐらいの映画で表現すること自体、土台無理があります。

例えば、不評だった実写版「進撃の巨人」には原作の名台詞「この世界は残酷だ」を言うシーンが出てきますが、それはそこまでのシチュエーションがあってこそ、その台詞が活きてくるのであって、土台の無いところで単に言うだけでは説得力がありません。要するに、荒筋を追うだけの作りになりがちで、描き込みが足りないからファンは特に不満に思うわけです。言い換えれば、ファスト映画を見ても感動しないのと同じです。又、漫画やアニメの実写化は現実的な話であれば違和感は出にくいですが、髪の色がピンクや緑で派手な服装の時点で実写にしたらコスプレにしか見えず、厳しいでしょう。

この映画で言えば、斉木を演じる山崎賢人が早口ではなく、普通のスピードで声に出してしゃべるのが台無しにしています。この原作漫画の最重要点は、主人公がひと言も喋らず、心の中で突っ込みを入れるという革命的な表現方法です。監督を選ぶ際に、特撮だから樋口真嗣監督にしようとか、少女漫画の恋愛物だから三木孝浩監督で行こうというのは間違いではありませんが、制作者が原作に思い入れが無いと、つまりファンの人たちがどこに感動したかとか、どこが好きかということを知らないと酷評を浴びることになります。

映画版のストーリーは、原作のいくつかの話を合わせ(体育祭と文化祭の話が中心）、それにオリジナル部分も付け加えたものです。38分、蝶野は文化祭に呼ばれた芸人として校庭でイリュージョンをやっています。演じるトリックはアニメの「テレビでψ会！蝶野雨緑」でやったものと同じです(異なるのは脱出に要する時間が5分から3分になっている点と、助手を母親がやっている点)。アニメでは斉木はテレビで見ていて、蝶野が失敗すると思って箱の中へテレポートするのに対し、映画では校庭で行われているものを斉木は生で見ています。透視能力を持つ斉木であれば、箱の中で何が行われているか見えるので(テレビに映っているものは透視できない)、助けるために箱の中へテレポートしようとは考えなかったはずで、設定に綻びが出ています。54分、蝶野は下駄箱から鳩を出そうとしているところで、斉木はそれを透視して、鳩を詰め込みすぎだと突っ込みを入れます。68分、再び校庭でショーをする蝶野。斉木はマンホールの下に隠れている助手の母親を透視で見てしまいます。83分、学校に殴り込んできた他校の不良が消えてしまい、蝶野がやったと思われます(実際には斉木が消した)。91分、跳び箱の中から蝶野が登場します。

次回は同じ山﨑賢人主演の「夏への扉」です。