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コラム

第25回 大草原の渡り鳥(2024.1/19 up)

まずはネット動画の話から。YouTubeの種明かし動画を見て、そこから選んだネタをマジック・クラブの講習に使っているという話を聞きます。お手軽に沢山の中から選べるからでしょうが、それは、“種の暴露”を認めるという倫理上の問題だけでなく、以下の理由からお勧めしません。

1.間違っている。例えば、ある動画では「手順通りにやればできるのがセルフワーキング・トリック」だと言っていました(しかし、選んだカードをダブル・カットを使ってコントロールしている)。商品なり発表された手順では、手順通りにやればできるのが大前提で、それだと全てのトリックはセルフワーキング・トリックということになります。特別な道具を使わず、手品の知識が無い人でも、手順通りにやればできるのがセルフワーキング・トリックです。ハドリングに関しても間違ったものをよく見かけます。悪い方法で覚えてしまうと後で直すのに苦労します。

2.種明かし動画は一見、見栄えがして、できそうですが、実演は難しいものが多いです。映像での利点には以下のことがあります。

・カメラは視点が一点のため角度に弱いものでも通用し、そういったものには不思議なものが多い(ライブには適さず、ちょっと横から見たら種がバレバレのものも)。

・セットが完了した状態から始められる(実際だと、観客の前に登場しなければならず、そこからスタートの状態に持って行くことが難しいものがあります)。

・実際に演じたら音がしてしまうものでも、編集で音を消したり、何度も撮り直して音が鳴らなかったものを採用できる。

・後始末が必要なものでも、動画は演技終了時点で終わり(現実は片付けなければならず、その点に問題を持っている場合がある)。

世の中には種が溢れています。それらを全部知り尽くしたいのであれば、ネットの動画を片っ端からチェックするのもありでしょうが、皆さんの時間は限られていますよね?種明かし動画から講習するよりも、東京堂出版などのしっかりした著者が書いた書籍から選んだものの方がためになります。只だからと言っても、得られる秘密はそれなりのものでしかありません。安かろう悪かろうで、只ほど高くつくものは無いのです。それでもネットの動画を参考にしたいのであれば、誰が考案したものかのクレジットが無いものはやめた方がいいです。クレームが付くことを恐れて、多くの種明かし動画は原案に対して何らかの変更点を入れていることが多いです(しかも改悪)。キャッチーなコピーで閲覧数が稼げればいいので、マジックとしての完成度が高い必要はなく、実戦で試したり、βテストも行われていないでしょう。つまりクレジットが無い場合、種明かしをしているその人が考えた低レベルのトリックの可能性が高いです。

アロン・フィッシャーらが3~4人で、優れたマジシャンの古い映像を見ながらZOOMでディスカッションするという動画がYouTubeにアップされています(Conjuror Community)。日本の場合、例えば映画の映像に解説を入れたものをYouTubeにアップしたら製作元から著作権の侵害だと訴えられるので、一般には写真を使って解説しています。しかし海外、アメリカなどではそういった使用(評価・解説・研究のためにオリジナル素材を用いる)に関しては緩いようで、上記のような動画を見かけることがあります。下記ではマイク・スキナーが取り上げられています。

映像を見ながら「ここのサイド・スチールは素晴らしいよね」といった感じで感想を述べ合うというもので、たいしたことを話していませんが、たまに珍しい映像が紹介されることがあります。マイク・スキナーは晩年になってから出したレクチャー・ビデオがありますが、かなり衰えてからのものなので見るとがっかりします。上記の映像は若い頃のもので、一見の価値ありです。フレンチでも販売されている「アルティメイト・スリー・カード・モンテ」を考案者がどのように演じていたか見ることができます。このトリックで一番重要なのは、客の座っている位置です。

以下の映像もマイク・スキナーが若い頃のものです。ダイ・バーノンのツイスティング・エーセスなどを演じていますが、タッチが軽く、独特のタイミングがあります。ネット動画で役に立たない新しい種を知るよりも、氏のハンドリングをそっくり真似てみて、どうやったら美しく見せられるかを学んだ方がレベル・アップに繋がります。

『大草原の渡り鳥』

大草原の渡り鳥

監督:斎藤武市
出演:小林旭(滝伸次), 宍戸錠(ハジキの政), 浅丘ルリ子(二宮靖子)
配給:日活
上映時間:83分
公開:1960年

シリーズ第5作で、「赤い夕陽の渡り鳥」の直後の話。会津から北海道の網走、釧路へ。飛行場建設のためにアイヌ集落を潰そうとする組織に立ち向かいます。53分、滝とハートの政のポーカー対決。政がテーブルにリボン・スプレッド、取り上げてプレッシャー・ファン、手から手へのスプリング、リフル・シャッフルをします。滝のAとKのフルハウスに対して、政がロイヤル・ストレート・フラッシュで勝ちますが、胸ポケットに隠していたカードを滝に取られます。そのシーンが以下の3分過ぎた辺りで見られます。

ハートの政がいかさまをした時点で滝の勝ちなのですが、何故か滝はコインで勝負しようと言い、10円硬貨の裏表で賭けて、裏を選んだ滝が勝ちます。その後、60分のところで、政は滝がダブル・フェイス・コイン(両面とも裏面)を使っていることを見破っていたけど見逃したんだと言います。映画の最後には、去って行く滝に向かって子供が叫ぶという「シェーン」をパクったシーンが登場します。


■日活マイトガイトーク その9『大草原の渡り鳥』

トピック

3月に発表される第96回アカデミー賞に合わせて、過去の受賞作から4作品が全国各地の劇場でリバイバル上映されます。コラムの第1回目で紹介した「スティング」も含まれています。未見の方は是非。

参考文献

1) 栗田研:「映像の魔術 大草原の渡り鳥」『Four of a Kind Vol.9 No.2』(チェシャ猫商会, 2005) p.286


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