YouTubeで岡田斗司夫ゼミを時々聞いています(YouTubeチャンネル登録者数が100万人近い)。コラム第16回「ルパン三世 カリオストロの城」で岡田氏の解説動画を紹介しましたが、SF小説、アニメ、漫画に関して造詣が深く、昔は「BS漫画夜話」(1つの漫画作品を1時間かけて徹底的に語り合う番組)にも出演していました。又、経済、文化にも独自の視点を持っており、なるほどと思わせられる意見もあります。氏はそこで、これからのホワイト社会において、嫌な人になる努力をやめる(他人から良い人と誤解される)ことが、社会生活における最適な生存戦略だということを話していました。嫌な人になるためにやってしまいがちなこととして以下のことを挙げています。
1.欠点を探して指摘する
2.改善点を提案する
3.陰で言う
4.悪口や批判で盛り上がる
5.悲観的、否定的態度を隠さない
これをマジックのアマチュアの発表会を見に行った場合に当てはめると、
1.欠点を探して指摘する→パームが見えていたよといったことを言うことは良い人に思えるけど、相手にストレスを与えるだけ。
2.改善点を提案する→聞かれたら提案すればよいが、ゴルフ場のアドバイスおじさんにならないように。そんなことは誰でも気づいているけど、できないことが多い。自分で引き受けるのであれば言ってもいいけど、思いついたアイディアは、実際にやってみたらできないことに気づく。
3.陰で言う→褒めるのも批評するのもSNSではなく、物理的に本人の前で言いましょう。
4.悪口や批判で盛り上がる→誰かの陰口は楽しく、仲間の結束力が上がる。
5.悲観的、否定的態度を隠さない→「これぐらいのことは分かっているよ」と言うことで、頭が良いように見せたい。
誤解のないように言っておきますと、岡田氏はこう言った意見を言うことを否定するのではなく、この先、そういう態度だと損をする世の中になりますよと言っているのであり、その覚悟でそっちの方向で生きていくなら、それはそれで構わないということです。それらに対する対処方法も挙げています。
1.共感する→それ分かる、それ良いかも(口先だけでも構わない)
2.褒める→本当に良いなら褒める
3.応援する、手伝う、助ける(ふりをする)→「何でも相談して」と言う(実際のところ、本当に相談しには来ない)
4.忘れる
是非、気をつけましょうね。と言っていて何ですが、3月3日に見に行った発表会はある意味、突っ込みどころ満載でした。演者の演技が終わり、暗転したところで客席から「OK~っ」という声が飛びましたが、「どこがOKなの?」と思いました。まあ、発表会なので良くても悪くても、練習したことを示せれば良いのですが...。アンケートを採っていましたが、客席の大半を占める同世代の若者は同じ考え方なので、彼らから悪い感想は出ないでしょうし、新たな客層を求めない限り、今の観客は満足しているので問題無いのでしょう。その辺りの世代間のギャップ、今の若者と高齢者のマジックに対する考え方の違いがどこからくるかについては、別の機会で述べます。では、本題へ。
「流れ者」シリーズは全5作あります。
1.海から来た流れ者(1960)
2.海を渡る波止場の風(1960)
3.南海の狼火(1960)
4.大暴れ風来坊(1960)
5.風に逆らう流れ者(1961)
「流れ者」シリーズの主人公、野村浩次は元麻薬課の刑事という設定ですが、それ以外は「渡り鳥シリーズ」と似ており、流れ者が、訪れた土地(舞台に趣向を凝らすため、伊豆大島、桜島、四国宇和島、松山、豊橋など、全国各地を巡ります)でのいざこざに巻き込まれ、毎回、浅丘ルリ子を助け、最後には列車、船、馬車などで去って行くというものです。この頃の日活は低予算の日活アクションで一世を風靡し、石原裕次郎、小林旭、宍戸錠、浅丘ルリ子などのスターを輩出しましたが、量産で飽きられ、テレビの台頭とともにその後、日活ロマンポルノへと事業方針を転換するのでした。昔は、俳優は基本的には映画会社に所属していることから、同じ俳優が違う役で金太郎飴のように出演しています。白木マリなどは「渡り鳥」シリーズには全作、「流れ者」シリーズには第2~5作に出演しています。これがマンネリ化した原因のひとつでしょう。野村は賭博師ではないため、「黒い賭博師」シリーズのように賭博シーンはあまり出てきませんので、まとめて紹介しましょう。因みに、登場する敵役が実は刑事だったという落ちが多いです。
監督:山崎徳次郎
出演:小林旭(野村浩次), 浅丘ルリ子(藤田礼子), 宍戸錠(神戸昭三), 葉山良二 (前岡達也), 川地民夫(三浦修)
製作:日活
公開:1960年2月28日
上映時間:84分
第1作の「海から来た流れ者」では、野村は奪われた自分の拳銃の行方を追うために、辞表を提出し、伊豆大島行きの船へと乗り込みます。島に着いたところで、礼子という女が神戸一派から襲われているのを助けます。13分、バーでいざこざがあり、野村はヤクザ連中と殴り合いになりそうなところへ前岡が出てきてアーム・スプレッドしたカードを集めて、スペードAを投げ、野村はそれをキャッチします。前岡はデックをヒンズー・シャッフルしながら「俺の前であんまりでっけえ口きかねえ方がいい。さもないと、その占い通り、ろくなことはねぇぜ」と言うのに対し、野村は「おまえは誰だ」と問いかけ、前岡は「もっぱらおまえさんみたいな威勢のいい奴の面倒見てる男よ」と答えます。野村はデックからカードを1枚引くとハートAで、「俺は自分の占いだけしか信用しないたちでね」とキザな挨拶をします。島を開拓し、温泉を掘っている藤徳組の社長の娘である礼子は、藤徳組を島から追い出そうとしている神戸一派から嫌がらせを受けていました。礼子は、東京で工事に必要な金の融資を受けて島に戻りますが、藤徳組の前岡により金が奪われてしまいます。金を取り戻すべく野村は、神戸一派の前岡のところへと向かいますが...。最後に神戸一派による爆破で意に反して温泉が出てしまい、めでたしめでたし。野村は神戸を火口にたたき込み、自分は実は麻薬取締官だと礼子に告げますが、警察を辞めたのか辞めていないのかはっきり分かりません。ただ、2作目以降は、何かを捜査するのでもなく、放浪の旅を続けます。
桜島を舞台にした第2弾「海を渡る波止場の風」では賭博シーンは出てきません。
監督:山崎徳次郎
出演:小林旭(野村浩次), 浅丘ルリ子(須賀清子), 宍戸錠(坊主の政), 岡田眞澄(辻井), 宮崎準(吉田)
製作:日活
公開:1960年9月3日
上映時間:93分
四国宇和島を舞台にした第3弾では真珠の養殖場を乗っ取ろうとするライバル会社と対決します。40分、パラダイスの賭博で、吉田の負けを払うために野村は右腕を賭けて、坊主の政と5個のダイスを使ったチムニーで勝負します。1回目は2人とも積み上げ、上の面を全て6にします(編集で繋いでいます)。引き分けなので、もう1度勝負することになり、政が先にやります。辻井の胸ポケットからハンカチを借りて額の汗を拭い、ハンカチを返す時にすり替えたダイスを一緒にポケットに入れて処理します。政は全て1の目を出しますが、野村はいかさまを見抜いており、ダイスを取り上げて銃で叩き、錘が入っていることを示します。
■日活マイトガイトーク その8『南海の狼火』第4弾「大暴れ風来坊」だけは見たことがありません(Amazon Primeの日活プラスで見られます)。豊橋の造船所を舞台にした第5弾「風に逆らう流れ者」では、拝島(神山繁)とポーカーで勝負をするシーンが1度出て来るだけです。
小林旭は他に「旋風児」シリーズ(全6作)がありますが、切りがないので次回からは日活繋がりで、石原裕次郎の主演作を紹介していきます。