コラム | マジック用品グッズショップ（手品ショップ）フレンチドロップ

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第49回　大日本スリ集団(2024.7/05 up)

バレーボール･ネーションズリーグ決勝で日本男子は“予言”どおり、銀メダルでしたが、相手はポーランドではなくフランスでしたね。日本の回転レシーブ、時間差攻撃、平行トス、イタリアのデータ･バレー、キューバの２人セッターといったように金メダル獲得の裏には新しい戦術がありました。以下は、1976年のモントリオール･オリンピックで日本女子が金を獲った時の取材番組ですが、戦略的にどうやったら勝てるかあらゆる手を尽くしており、感心します。オリンピックは控えを含めて13人しか登録できないにも拘わらず、今回、女子はリベロを３人も入れましたが、これがどう転びますか．．．？

マジックもFISMでメダルを狙うのであれば、マジックそのものや現象だけでなく、例えば、審査員に対してロビー活動を行うなど、多面的な戦略を考えていくべきでしょう。

以下は、第44回で紹介した「黄金の指」の映画の中の風景を2019年の同じ場所と比較したものです。46年も経っていますが、建物など、結構、変わっていないのですね。

『大日本スリ集団』

監督：福田純
脚本：藤本義一
原作：藤本義一
出演：小林桂樹(船越富蔵),三木のり平(平平平平), 酒井和歌子(昭子), 高橋紀子(紙江),寺田農(平一郎), 田中邦衛(金貝),平田昭彦(フランス), 波多野憲(城山)
配給：東宝
劇場公開日：1969年11月22日
上映時間：95分

戦友でもある刑事とスリの奇妙な友情を軸にした人情話。刑事が小林桂樹、スリが三木のり平という社長シリーズのコンビなので、それらを見たことがある人は、２人の掛け合いを楽しめばよろしいでしょう。大阪万博の前年、高度経済成長期の大阪や、当時の祇園祭を見ることができます。

平平平平(ひらだいらへっぺい)と船越富蔵は大戦中の部下と上官でした。戦争が終わり、大阪で平平はスリに、船越は刑事になっていました。平平はスリ集団の組合を作っており、あがりはみんなで分け、逮捕された場合、家族には５万円の慰労金が組合から支給されるなど、他のスリ映画に出てくる組織とは異なります。13分、スリ達は湯と氷水に交互に手を浸ける訓練をします。どういう効果があるのかは分かりません。フランスを演じる平田昭彦は、「ウルトラマン」で岩本博士を演じた人です。23分、20年ぶりの戦友会の宴で何か余興をやれと平平は言われ、代わりにフランスが出向いて、カード･マジックを披露します。ファン･カードを使って、カスケード、左腕にアーム･スプレッドし、ターンしてキャッチします。その後、デックから１枚引かせ、引いたカードを当てる間に船越の警察手帳をスリます。カード当ては単に○の○とカードの名を言って当てるだけですし、警察手帳に関しても、盗む動作はなく、単にすったものを出すだけです。そして船越は娘の昭子がいつも持ち歩いて秘密にしている封筒をすってくれと平平に頼みます。29分、車内で平平は明子のハンドバッグから茶封筒をスリます。封筒には婚姻届けが入っており、昭子は城山という妻子ある男と恋仲であったことが分かります。

その後、フランスはパチンコ屋でスリを働くところを船越に見つかり、逃げる途中で自動車にハネられて死にます。怒った平平はその仕返しに昭子に婚姻届を盗ませたのは父親の船越であるとバラします。52分、平平は家でざまあみろと喜びながら、キッチンペーパーのような紙を積み重ねた山の下から１枚ずつ、素早く抜き取る練習をします。64分、京都祇園祭の雑踏でのスリのシーンがあります。ズボンの後ろポケットから財布をスリ、直ぐに仲間にリレーします。

今回は７本のスリを主人公にした映画を挙げましたが、この中で１本見るとしたら第43回に紹介したフランス映画の「スリ」でしょう。因みに、監督のロベール･ブレッソンは偽札作りの話、「ラルジャン」も撮っており、「スリ」が気に入ったらこちらもどうぞ。偽札作りをテーマにした映画は殆どありませんが、大映の黒のシリーズ「黒の札束」では、どの札を作ったらリスクが少なく儲けが多いかを考えるところなど、妙にリアリティがあって良かったです。アニメでは「ルパン三世」第１シーズン第17話「罠にかかったルパン」が傑作です。

30億円の身代金を用立てるために、夜中に造幣局に忍び込んで刷ってしまおうという話です。

次回からは賭が出てくる映画を連続していくつか紹介していきます。まずはスリーシェル･ゲームが登場する日本映画「泥の河」です。