連載も50回になり、「この映画に島田晴夫が手タレで出ているよ」と言った情報や色々な感想をいただくようになりました。前回、平田昭彦は「ウルトラマン」で岩本博士を演じた人、と書いたところ、「ゴジラ」で芹沢博士を演じた人と言った方が分かりやすいというご意見がありました。「ゴジラ」1作目の公開当時の1954年には私は生まれておらず、かなり後になって見たので、リアタイで見た「ウルトラマン」の最終回「さらばウルトラマン」の方が印象に残っているのです。因みに、最終回では科学特捜隊の本部にまでゼットンが攻め込んできますが、建物の外観は模型で、建物の周りの芝生のところは東レの基礎研究所が使われており、当時、撮影を見に行きました(因みに、第28回「人間標本5・6」で出てくる研究室も同研究所です)。芹沢博士がキャップ、フジ隊員と並んで「あれを見たまえ」と空を指さすシーンを写した写真が家のどこかにあったのですが、探したけど見つかりませんでした。
オープニングからどうぞ。
監督:小栗康平
原作:宮本輝
出演:田村高廣(板倉晋平), 藤田弓子(板倉貞子), 朝原靖貴(板倉信雄), 加賀まりこ(松本笙子), 桜井稔(松本喜一), 柴田真生子(松本銀子)
配給:東映セントラルフィルム
公開:1981年
上映時間:105分
原作は芥川龍之介賞など数々の賞を受賞した宮本輝が太宰治賞を受賞したデビュー作。自主制作で配給先がなかなか決まりませんでしたが、公開されるとアカデミー賞外国語映画部門にノミネートされ、キネマ旬報ベスト・テンの1位など、数々の賞を受賞しています。昭和31年、戦後10年以上経っても高度成長期前のまだまだ貧しい時代、大阪を舞台とした、ひと夏の出会いと別れのほろ苦い経験を描いたものです。
昭和31年の大阪。信雄の両親(晋平と貞子)は、安治川の河っぷちでうどん屋を営んでいます。ある日、信雄は対岸に繋がれた廓舟(くるわぶね。売春のための舟)に住んでいる喜一とその姉の銀子と知り合います。喜一は信雄と同じ9歳で、銀子は12歳でしたが、2人とも学校には行っていません。喜一たちの母親の笙子は生活のために舟で客を取っているため、父親の晋平からは夜は舟に行ってはいけないと信雄は言われますが、何故なのか理解できません。しかし信雄が2人を店に連れてくると、信雄の両親は暖かくもてなします。47分、母親が売春婦であることを言い出した店の客を晋平は追い出します。元気の無い喜一を喜ばせようと、晋平は手品を見せようと言います。そしてタオルをテーブルに押しピンで留め、おちょこで3シェル・ゲームを行います。何も敷かないと玉が滑ってしまいスチールしにくいのですが、ちゃんとマットを敷いているところは芸が細かいです。スチールは実際に行っているようですが、おちょこへロードする部分は実際にやっていないようで、カメラが切り替わっています。ゲームは3回行われ、その後、73分のところでも男の子たち2人に再び見せています。他に65分に信雄がちんどん屋と会うシーンでピエロがバク転します。
田村高廣と藤田弓子が演じる夫婦は売春婦の子供だからと言って蔑むことなく松本姉弟にも優しく接しており、家へ来た時に風呂に入れてあげるところなど人情味溢れた良いシーンです。元々、喜怒哀楽の無かった信雄が岸を離れた舟を追いかけ、「きっちゃーん」と喜一との別れの悲しみを爆発させます(多くの人がジーン・ハックマン主演の「フレンチコネクション2」を思い出したことでしょう。リバイバルするなら、この2本で同時上映ですね)。スティーブン・スピルバーグは子役の演技が自然なことを褒めています。ただ、殆どが表情の無い役なので、何を考えているのか読めないところが多かったです。原作を読めば心情を理解できるかもしれません。ともあれ、文句無しにお勧めの映画です。
マルセ太郎は色々な映画をひとり舞台で演じており、「泥の河」は以下で見られます。手品シーンもふりだけですがやっています。最後の別れのシーンの再現は、まさしく名人芸です。
以下は「泥の河」の朗読です。手品のシーンでは「消える卵」という表題の、卵を消して再び出すというトリックをやっています。役者が卵を消すことが難しいので、映画化に当たって3シェル・ゲームに変えたのでしょう。
次回からは、“ちょっとした賭け”を連続して取り上げていきます。手品のテクニックが使われているところもありますのでお楽しみに。
今週は私の1番好きな西部劇でもある「リオ・ブラボー」が放送されます。
この映画に出てくる手品シーンについてはいずれ紹介しますが、YouTubeで映画監督の馬場康夫が監督のハワード・ホークスについて色々と面白い話をしているので参考にどうぞ。
7月7日 15時20分~ 「路線バスで寄り道&お買い物の旅」 テレビ朝日
7月12日 13時~ 「リオブラボー」 NHKBS