オリンピックでは予言通り?フェンシングで2個のメダルを取り、卓球では中国の男子選手が負けましたが、こちらはラケットの破壊という予想外のことが原因でした。フランスは柔道が盛んな国なので開催国への忖度を懸念していましたが、いくつかの試合で見られました。数字で判定できる競技ではないので、審判のさじ加減によって勝敗が左右される種目と言えます。効果的でない技を単に繰り返すことで相手に指導がいくような戦術は、場外に押し出せば指導が取れていた時代に戻った気がします。
予告編が無かったのでメイン・テーマからどうぞ。「スティング」の「エンターテイナー」ほど有名ではありませんが、1930年代の雰囲気を出した、軽快な映画音楽の名曲です。手品のBGMにも使えますね。
原題:Borsalino
監督:Jacques Deray
原作:Eugene Saccomano(The Bandits of Marseilles
製作:Alain Delon
音楽:Claude Bolling
出演者:Jean-Paul Belmondo (Francois Capella), Alain Delon (Roch Siffredi)
配給:パラマウント映画
公開:1970年
上映時間:126分
製作国:フランス、イタリア
この頃のフランスでの1番人気はジャン=ルイ・トランテニアン、2番がジャン=ポール・ベルモンド、3番がアラン・ドロンでした(日本では逆の順)。そのトップの2人ががっぷり四つに組んだギャング映画で、フランスでは大ヒットし、続編「ボルサリーノ2」も作られました。製作者でもあるドロンがベルモンドとの共演を望みましたが、撮影で2人はうまくいかずに仲違いし、次に共演したのは28年後の「ハーフ・ア・チャンス」でした。ベルモンドがライバル意識むき出しだったことが原因のようです。
1930年代のマルセイユ、窃盗で4ヶ月の刑期を終えて出所したシフレディは彼女に会いに行くと、そこにはカペラという男がいて、女の取り合いで殴り合いをします。しかしこれが縁で友情が芽生え、2人で暗黒街をのし上がっていきます。マルセイユはニューヨークやシカゴと同様、ギャングの街として映画に登場することが多いです。元々、“ギャング”とは港に着いた船から荷を運ぶ艀のこと指しており、そこを仕切っていたグループのことをギャングと呼ぶようになったということです。ジーン・ハックマンがアカデミー主演男優賞を受賞した刑事映画の名作「フレンチコネクション」は、マルセイユから密輸されてくる麻薬を取り締まる話です。列車で逃げた殺し屋を車で高架線の下を追いかけるシーンは、カー・アクションの走りとなったもので、今ならCGを使えばありえないアングルから撮影できますし、派手な映像をいくらでも作ることができますが、やりすぎ感のするものも多く、CG無しのリアルなショットは見るものに伝わります。
手品でも、例えばミリオン・カードの1枚出しをスライハンドでやるのと、ギミックを使ってやるのとでは、同じように見えても前者の方が拍手が多かったりします。それはそのやり方がスライハンドだと知って拍手しているのではなく、観客はリアルとCGの違いみたいな、何かの差を感じ取っているのだと思います。
題名のボルサリーノとはイタリアの帽子のメーカーのことで、それを被り、ロールスロイスに乗れば成功者の証となります。アラン・ドロンは監督のジャック・ドレーと7~8回は組んでいますが、その中で1番の出来と言えるでしょう。主役2人のかっこ良さを楽しめばいい娯楽作品です。YouTubeで“Borsalino”で検索すればフランス語ですがフル動画を見ることができますので、下記シーンだけ確認したい方はどうぞ。
劇中で2人は3回賭けをします。16分、カペラが「金儲けの話がある。やるかやらないかコインを投げて決めよう」と言い、カペラが勝って、やることになります。49分、シフレディがポリという食肉業者を潰そうと提案しますが、反対したカペラがまたも勝って、その話は流れます。終わり近く119分、「いつか2人は撃ち合うから出て行く」と言うカペラ。シフレディが「それなら自分が出て行く」と答えたのに対し、カペラはここでもコインを投げて負けた方が出て行くことにしようと言います。シフレディが裏か表かを指定し、カペラがコインを投げ、負けたので行こうとしますが、カペラが投げ上げたコインをシフレディがキャッチし、ダブル・フェイス・コインを使っていたことを見破ります。つまり、カペラはチョッキの両ポケットに両面裏と両面表のコインを各々入れており、裏表が指定されるのとほぼ同時に、勝てる方のコインを取り出しています。この辺の動きが手品的です。「ツキなんてないのさ」と言って、カペラは出て行きます。以下の予告編では、最後の賭けで投げ上げたコインをシフレディがひったくるシーンが出てきます。
せっかくですから、コイン・トスを手品にしたものを紹介しましょう。 お勧めはフレンチでも取り扱っている、Gary Kosnitzkyの「ヘッズ・オア・テイルズ」です。無駄なものを使わずに、ネタ無しでコインの表か裏を出すことができます。100%出せるわけではありませんが、5回勝負とかにすればトータル的に勝てます。この技術を持っていれば、何かの時に身を助けるかもしれません。
コイン以外の道具を使ったものとして「表裏一体」やMickael Chatelainの「Heads & Tails Prediction」があります。
後者は3枚のコインの裏表が紙に予言されているというもので、ハンドリングは自然で、易しいですが、至近距離だとばれそうです。それにコイン以外の道具も使うと何か怪しいですね。
他には、マインド・リーディングで裏表を当てるRimoirgeの「Coin Toss Mind Reading」、客が投げたコインの裏表を当てる方法と、自分で投げて裏表をコントロールする方法が解説されている「Hot & Cold(Head or Tails control Over Long Distance) DVD」があります。
Which Hand、いわゆるどちらの手に握っているか当てる現象には、John Mortonの「Twins」、Arthurの「Which Hand? Overlooked」、Manos Kartsakisの「V2」などがありますが、Iarvel Magicの「Espionage」は更にコインの裏表まで当ててしまうという進化版です。
次回もジャン=ポール・ベルモンドの出演作品「カトマンズの男」を紹介します。
1) 栗田研:「映像の魔術 ボルサリーノ」『Four of a Kind Vol9. No.2』(チェシャ猫商会, 2005) p.285