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コラム

第63回 オーソン・ウェルズのフェイク(2024.10/11 up)

10月5日はさわやかちば県民プラザホールで行われた「第36回柏マジッククラブ発表会2024」に行ってきました。おそらく、社会人マジック・クラブの中で1番平均年齢の低い発表会でしょう。小学生から80代まで、幅広い年齢の方が出演されました。どこのクラブも高齢化に伴い自然消滅の危機に瀕しているのに羨ましい限りです。若手のスライハンドをする人もいるので、演目に幅が出ます。感心したのは、小学生の女の子でも見せ方がしっかりしていたことです。観客に物を見せる、空であることを改める、お呪いをかける、終わったら礼をするということがちゃんと教えられており、それが出来ているということです。子供は色々と興味が移るので、やめてしまう頻度も高いですが、長く続けていってほしいですね。因みに、小さい子が何かやるというきっかけは、仲の良い友達もやっているから自分もという場合が多いです。従って、1人入ってくれば、それにくっついて入ってくる子も期待できます。待っていれば新しい人が次々と来る時代ではありません。募集活動は常に継続していなければならず、自分がいる間はクラブが存続すればいいという考えでは、将来、どうなるかは素人でも予言できます。

10月27日は荒井晋一主催の「第40回たっぷりとクロース・アップ・マジック」に行く予定です(第1回では「たっぷりとクローズ・アップ・マジック」でしたが、いつの頃からか、クロース・アップになりました。NHKの「クローズアップ現代」のせいですね)。昔は150人以上の来場者が来るなど、マジック愛好家の社交の場としても賑わった催しでしたが、回を重ねるごとに観客は減る一方で、昨年は30数人と寂しい限り。大部屋に5テーブルあり、演者がぐるぐる回るスタイルなので隣のテーブルがうるさかったりするのですが、この人数だと2テーブルあれば十分では?宣伝方法は、来た人への案内葉書、発表会予定表への掲載、と第1回から変わらず。出演者は名の知れたプロの方々で、ファンの人もいるでしょうから、出演者たちがそういう人へ宣伝すれば50名は来るのではないでしょうか?今回40回で切りよく終了ということで、お土産が付く予定でしたが、それが間に合わないためか、お土産は無しになり、来年もやるそうです。あまりに寂しいので宣伝します。行ってあげてください。


Tappuri

60歳以上の人ならオーソン・ウェルズと言えば、英会話教材、イングリッシュ・アドベンチャー「追跡」(シドニー・シェルダン原作)の朗読として知られています。さすが、ラジオで朗読をやっていただけあって、冒頭の「Watch out!」という台詞から引き込まれましたね。



オーソン・ウェルズは、デビッド・カッパーフィールドの初期の特番で案内役として出演していたので、映画を見ない人でも手品をやっていれば知っているでしょう。本人も手品を趣味としており、映画の中で披露しているものがいくつかあり、本作もその1本です。予告編からどうぞ。



『オーソン・ウェルズのフェイク』


Fake

原題:F for Fake
監督:Orson Welles
脚本:Orson Welles、他
出演:Orson Welles(本人), Joseph Cotton(本人), Laurence Harvey(本人), Oja Kodar(本人)
音楽:Michel Legrand
配給:フランス映画社
公開:1973年
上映時間:89分
製作国:イラン、フランス、ドイツ

ドキュメンタリー映画で、オーソン・ウェルズ本人が案内するのは地中海に浮ぶイビサ島。ここには今世紀最大といわれるペテン師が2人います。ひとりは、ピカソ、マティス、モディリアーニなどの絵を描き上げてしまう贋作画家のエルミア・デ・ホーリー。例えば、ピカソの「アビニヨンの娘たち」を完璧に模写したとしても、その本物はニューヨーク近代美術館にあるので、贋作だとばれてしまいます。デ・ホーリーが他の贋作画家と違うのは、ピカソがアビニヨンのおばあさんたちという絵を描かなかったとは証明できないので、そういった絵をいかにもピカソが描いたように描き、ピカソ作だと売りつけるというものです。因みに、贋作をテーマにしたものと言えば、ジェフリー・アーチャーのベストセラー小説「百万ドルをとり返せ!」があります。投資詐欺に遭った4人の被害者が協力して、首謀者から損害の100万ドルを、知られずに取り返すという話で、イギリスでテレビ・ドラマ化もされました。コンゲームの話なので、「スティング」がお好きな方は読んでみてください。

話を戻して、デ・ホーリーの伝記「贋作」を書いたのが、もう1人のペテン師、クリフォード・アーヴィングです。アーヴィングがペテン師と呼ばれるようになったのは、謎の大富豪ハワード・ヒューズのニセ自伝事件を起こしたことによります。アーヴィングがこっそりと本人にインタビューしてまとめあげたヒューズ自伝が、アメリカの出版社から刊行される直前、ヒューズ側から待ったがかかったのです。7人の記者を集めた電話による奇妙なインタビューで、ヒューズはアーヴィングなどという男と話したことはないと証言しましたが、果たしてそれはヒューズ本人の声だったのか?ヒューズは謎の人物で、人前に姿を現さない男でした。そして、ウェルズ自身もフェイカーで、23歳の時に、ラジオの朗読「火星人襲来」で一躍有名になりました。果たして、話していることはどこまで本当なのでしょうか?

冒頭、プラットフォームで、オーソン・ウェルズが鍵のマジックを見せます。子供から鍵を借り、手に握るとコインになり、そのコインを消します。鍵は子供のポケットに戻っています。その鍵を再び受け取り、消します。子供のポケットからコインが出てきて、それを鍵に変えます。子供の口から沢山の小銭を出し、それを手に握って消します。カメラの死角やフレームから外れるところ、及び編集を上手く利用しており、動きとしての不自然さは見られません。



8分、女性が公衆電話のような箱に入り、ハンドルを回すと、天井部分が下がってきて潰されて、下からアタッシュ・ケースが出てきます。アタッシュ・ケースに入れてしまえば、旅行が楽だということです。87分、草原でデ・ホーリーに布を掛けて消します。布を掛けて浮遊させて消すところが、下記の動画で見られます。



オーソン・ウェルズと言えば、「市民ケーン」の革命的な映画の撮影法で有名になりました。遠いところから近いところまで画面全体にピントが合っているパンフォーカスなど、当時は画期的だったので、映画ベストテンを選ぶと、1位に選ばれることが最も多い作品です。伏線の張り方が見事で、最後に「なるほど、そうか!」と唸らせてくれますが、撮影方法は今ではあたりまえのやり方なので、見るには忍耐がいります。他では、監督主演した「黒い罠」が、そのオープニングの長回しで一見の価値ありです。巨大なクレーン車を使って撮影したそうで、公開時は映画自体も評判は良くなかったですが、後年、再評価されました。悪徳警部を本人が怪演しています。



次回は、オーソン・ウェルズが唐突に手品を披露する「007カジノロワイヤル」(1967年版)を紹介します。

参考文献

1) 栗田研:「イベントレポート たっぷりとクローズ・アップ・マジック」『ザ・マジック Vol.80』(東京堂出版, 2009) p.68


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