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コラム

第67回 ミッション:インポッシブル(2024.11/08 up)

10月27日には、「第40回たっぷりとクロース・アップ・マジック」を見に行きました。私がここで宣伝したおかげで?来場者は前年の25%アップ。若いマニアの人たちが増えた感じです。全体としての印象は、演者が声が出ていないということでした(比較的若手である、のじまのぶゆきさん以外)。隣のテーブルまで2メートルしかないところで同時に演者がしゃべるので、昔は会場内がうるさかったのですが、30年以上前から出演している人もおり、みんな歳を取ったということでしょう。出演者の全員が道具を売ったり、レクチャーを生業にしており、DVDの作品や商品を演じるのは分からなくもないですが、それが演技の大半で、昔に発売されたものだったりすると、¥4,500という高い入場料のディーラー・ショーだと感じます(荒井晋一氏の演技は殆どが商品ですが、気にならないのは、当日発表される新ネタだからですかね)。この会場でその入場料にするなら、¥1,000の商品券を付けるぐらいのことをしてもいいでしょう。ショーとしての全体のコンセプトは無く、何をするかは演者にお任せというのは手を抜きすぎと思いますが、逆にそれが“たっぷりと”らしいとも言えるでしょう。去年の演技とトリネタまで殆ど同じ演者もいました。プロであれば研鑽した同じものをどの観客にでも披露すればいいとは思いますが、“たっぷりと”はマニアの場なので、18番じゃなくてもいいから新しいものが見たいです。逆に坂井弘幸氏の、「良いホルダーを見つけたのでやってみました」とグラス・プロダクションをしたり、ロジャー・クラウスの「The Sponge & Sleeve」を演じ、大きなスポンジ・ボールでも出来ますと違いを説明する方がマニアの会という感じで面白いです。

今回は前回に引き続きブライアン・デパルマ作品から「ミッション:インポッシブル」です。因みに、デパルマは私の最も好きな監督で、ベスト3は1位から順に「ファントム・オブ・パラダイス」「愛のメモリー」「ボディ・ダブル」です。ヒッチコック的なサスペンス映画を得意としており、プロデューサーでもあるトム・クルーズが1作目はサスペンス映画を作ろうと思って監督に抜擢したのだと思います。従って、2作目以降に比べて、派手な見せ場が少ないため、詰まらないと思う人がいるかもしれませんが、アクションではなく、サスペンスだと思って見ると、また見方が変わってくるでしょう。

『ミッション:インポッシブル』

ミッション:インポッシブル

原題:Mission: Impossible
監督:Brian De Palma
製作:Tom Cruise, Paula Wagner
出演:Tom Cruise (Ethan Hunt), Jon Voight (Jim Phelps), Emmanuelle Beart (Claire Phelps), Jean Reno (Franz Krieger), Ving Rhames(Luther Stickell)
配給:パラマウント映画
公開:1996年
上映時間:110分
製作国:アメリカ

いわずと知れた人気テレビ・シリーズ「スパイ大作戦」の劇場版。アメリカ政府が公に手を下せない極秘任務を遂行するスパイ組織、IMF(Impossible Mission Force)メンバーの活躍を描くアクション・ドラマ。映画の方はシリーズが進むにつれてプロットが複雑になり、チームが協力して不可能を可能にするといった点が弱く(テレビでは裏切りが無い)、「スパイ大作戦」というオリジナルの設定は、自動的に消滅するメッセージ、ラロ・シフリンのテーマ曲、チーム・リーダーがテレビ版と同じフェルプスであること、騙すために「スティング」でも出てきた“吊り店”を使うことぐらいです。結局、主役であるトム・クルーズが活躍する場を作らなければならず(最初に何人かのメンバーが殺されてしまうので、彼がやらなければならないという設定ではありますが...)、彼ひとりいればほぼ解決できてしまうところに問題があるのでしょう。又、IMFやCIAからも協力が得られないだけでなく追われる設定が多いのが劇場版の特徴です(当局はいっさい関与しないのは分かりますが、足まで引っ張るの?)。

74分、クリーガーがCIA本部から盗んだデータは自分が持っているとMOディスクを見せびらかします。それに対してイーサンは、それはすり替えた偽物で、本物はこちらだとアタッシュ・ケースから別のMOを出して見せます。「この手品を知らない?」と両腕を前に伸ばし、両手の間に挟んだそのMOを消し、クレアの懐から取り出します(ここは単に腰の辺りにあったものを取ってくるだけ)。再び手に持ち、背を向け、両手を左右に伸ばし、MOを消して手が空であることを示した後、自分のズボンの後ろポケットから取り出します。イーサンが自由にMOをすり替えられることを見せられたクリーガーは怒って、自分の持っていたMOをゴミ箱に捨てて部屋を出て行きます。その後、イーサンはゴミ箱からMOを回収し、ルーサーに預けます。ルーサーはMOを消そうと試みますが出来ません。実際にはクリーガーが持っていたものが本物で、イーサンはクリーガーに捨てさせるために、MOを消したり出したりしたのです。MOを消すところはCG処理です。この映画が公開された後に、Jonathan M. Strainが「Where Does the Music Go?」というCDが消える商品を発売しました。映画に便乗して売り出したものでしょうが、CDに引きネタのゴム紐を付けたもので、道具もハンドリングもおそまつなものでした。以下はその挿絵で、袖に入りそうにないのですが...?


ミッション:インポッシブル2

映画としての出来は悪くないので、もしシリーズを全く見たことがないならば、本作と2作目の「M:I-2」をお勧めします。「M:I-2」は「スパイ大作戦」から更に外れたと評判は悪いですが、その年に1番ヒットした作品ですし、トム・クルーズの自撮りアクション映画だと思えば楽しめます。ジョン・ウー監督のアクション・シーンは、細かいカット割りからスローモーションへと切り替わる、ダンスのような動きが特徴です。


テレビ版「スパイ大作戦」では初代リーダー、ブリッグスの時から手品シーンが出てきます(因みに、マーティン・ランドー演じるローラン・ハンドの得意技は手品という設定)。又、「新スパイ大作戦」では、液晶でカードの表示が変化するトリック・カードが出てきました。カード・マジックとして売り出される日も近いでしょう。「こいわきじゅつ No.18」には小野坂東が「スパイ大作戦に見たカードテクニック」という寄稿で、劇中に出てきたテン・カード・ポーカーについて書いています。テレビ版の方についてもいずれ紹介します。次回は劇場版第4作「ミッション:インポッシブル/ゴーストプロトコル」です。

参考文献

1) 小野坂東:「スパイ大作戦に見たカードテクニック」、『こいわきじゅつ No.18』(小岩奇術愛好会, 1982), p.3

2) 栗田研:「ミッション:インポッシブル」『Four of a Kind Vol.9 No.2』(チェシャ猫商会, 2005) p.288

トピック

11月9日 21時45分~ 「世界最高峰のマジック殿堂 マジックキャッスル2024」 NHK BSプレミアム4K

11月23日 21時~ 「マジックキャッスル2024」 NHK BS


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