コラム | マジック用品グッズショップ（手品ショップ）フレンチドロップ

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第73回バグダッド･カフェ　ニュー･ディレクターズ･カット版(2024.12/20 up)

今回はウディ･アレンの「マジック･イン･ムーンライト」を紹介する予定でしたが、「バグダッド･カフェ」が全国リバイバル上映中で、是非、劇場へ見に行っていただきたい映画ですので、予定を変えて紹介します。

予告編から。

『バグダッド･カフェニュー･ディレクターズ･カット版』

原題：Out of Rosenheim
監督：Percy Adlon
脚本：Eleonore Adlon, Percy Adlon
主題歌：Jevetta Steele
出演：Marianne Sägebrecht (Jasmin Münchgstettner), Carol Christine Hilaria Pounder (Brenda), Jack Palance (Rudi Cox), Monica Calhoun(Phyllis), George Aguilar(Cahuenga), G. Smokey Campbell(Sal)
マジック指導：Walter Kruska
配給：KUZUIエンタープライズ
上映時間：108分
公開：2008年(オリジナル版1987年)
製作国：西ドイツ、アメリカ

カリフォルニアの砂漠地帯にあるダイナー兼ガソリンスタンド兼モーテル“バグダッド･カフェ”に集う人々と、そこに辿り着いたドイツ人旅行者の女性との奇妙な交流を描いた作品で、ファンタジーの趣があります。ジェヴェッタ･スティールのテーマ曲「コーリング･ユー」は、第61回アカデミー賞歌曲賞にノミネートされ、多くの歌手によりカバーされたので耳にしたことがあると思います。ちょっと「ツインピークス」を思わせる気だるい曲です。

廃れたところによそ者がやってきて、そこの人たちとふれ合うことで、人生を諦めていた人たちに新しい風を吹き込むといった映画は色々とありますが、これもそのジャンルに入る作品です。色々な編集版がありますが、ここで解説したマジックが登場する時間は、2008年公開のニュー･ディレクターズ･カット版からのものです。カリフォルニアの砂漠が舞台なのでバリバリのアメリカなのですが、西ドイツ映画なので、アメリカ映画では見られない配色で、画面から出る雰囲気は異国の地を思わせます。最初はこれからどう展開するのか分からずに、とっつきにくいですが、よそ者のジャスミンがどんどん勝手に行動していく辺りから面白くなってきます。コメディ、シリアス、ペーソスといったシーンの切り替えが見事で、見終わった後も幸せな気分になれるお勧めの1本です。

マジック･シーンを主体に解説します。ドイツから観光旅行に来たジャスミンは夫と喧嘩し、砂漠に置き去りにされ、道路をテクテクとひとりで歩くことになります。そして寂れたバグダッド･カフェにたどり着き、モーテルに泊まります。30分、間違って持ってきてしまった旦那のトランクにはお土産として買った？“Magic Set”(沢山のマジックができる初心者向けの商品)が入っており、これが後の伏線となります。71分、暇をもてあましたジャスミンはモーテルの部屋でカラー･チェンジング･シルクを練習しはじめます。右手から左手にダイ･チューブをパスするところ、シルクが変色した後、ダイ･チューブを左手から右手でスチールするところなど、初心者とは思えない手つきです。バグダッド･カフェの女主人、ブレンダの孫の赤ちゃんをあやしながら、人差し指に填めたシンブルを見せ、投げ上げた動作でサム･パームして消します。75分、ダイナーへ来た客に豆のスープ？を出し、客が「クラッカーは？」と尋ねるのに対し、両手を改めてから２パック出します(右手で胸元からスチールと、左手で腰からスチール)。ブレンダの娘、フィリスの胸元からシルクを取り出し、息子、サルJrの耳の後ろからコインを出します。店員のカヘンガの両耳から卵を1個ずつ出し、片方を割って本物の卵であることを示します。1個目に取り出す本物は顔の死角に置いてあったものを取り出し、2個目の割らないものはスポンジ卵でしょう。両手を改めてからバラの花を出して、ブレンダに渡します。ダイナーに来た客を相手に悟空の玉を見せます。ブレンダが持った花束から花を取り、やかんで水をかけるふりをすると、花が咲きます。コイン･ペルを使ってマイザーズ･ドリーム。客の手を箱に入れ、ナイフを刺して箱を分けるトリック(実際には客の手ではできません)。画家であるルディの絵のモデルになりながら、花を出します。店で皿などを下げながら、客の持ち物(ナイフ、カツラなど)をスチールし、その後、それらをバケツから取り出していきます。終わり近くで、ジャスミンとブレンダは歌いながらダンシング･ケーンを行います。主役のマリアンネ･ゼーゲブレヒトは、映画の中で手品をする俳優としてはかなり上手くやっていると思います。

漫画「ワンピース」の「アラバスタ編」に出てくる「スパイダーズ･カフェ」は、この映画がモデルです。