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コラム

第36回 十三の眼(2024.4/5 up)

3月31日には武蔵野芸能劇場 小劇場で行なわれた「K.A.M.C. OB有志公演 彼女はまだ手品好き♡」に行ってきました。発表会にしては珍しく有料(千円~五千円。又、二千円以上カンパすると映像特典があります)。150席程度の小さな劇場は満席で、OBなど関係者がほとんどでした。K.A.M.C.と聞いてもどこの団体か分からないと思いますが、開成中学校・高等学校のマジック・クラブのことで、創立50年もの歴史があります。


K.A.M.C. OB有志公演 彼女はまだ手品好き♡

大学のマジック・クラブだと、入学してマジックを始めたという人が多いようですが、開成出身の人たちは中学高校からやっているので、手品歴が長いためかレベルの高い人が多いように見えます。有名な人ではF.I.S.M.に2回出場した菰原裕氏がおり、今回はトリを務めました。色々な大学の発表会を見ていて、この人は上手いなとか、面白いアイディアだなと思った人たちが結構、開成出身だったというのを後から知ってビックリします(大学のクラブの発表会ではどこの高校を卒業したということは紹介されませんので)。昨今、大学のクラブ以外で色々な有志やサークルの発表会が開催されるようになり、色々と見ましたが、技術的な面で言うと、ここと1月6日に荏原文化センターで行なわれたサンナナ5のレベルが高かったです。又、K.A.M.C.OB有志公演は、中学高校からやっているためか、所謂、大学の学生マジックに見られる変な癖や悪しき習慣があまり見られないのが良い点です。若手の育成をすべきだと様々なところで色々な人たちが言っていますが、若い人のレベルをアップするには、学生マジックの悪い伝統をぶち壊すことが手っ取り早いと思います。学生マジックはガラパゴスのように特異な進化をしてきており、オリジナルの現象やテクニックが沢山、編み出されてきたのは事実ですが、最近はコロナで部員が減ったり、発表会が開催できなかったため、正しく継承されず、変なところばかり残り、レベルが下がってきているのが現実です。

『十三の眼』

「七つの顔」の翌年に制作された第2弾。こちらもパブリックドメインと思われます。


十三の眼

監督:松田定次
脚本:比佐芳武
出演:片岡千恵蔵(七つの顔の男), 喜多川千鶴(戸川タマキ), 葛木香一(松川刑事), 奈良光枝(ルリ), 美奈川麗子(小柳ミチ)
配給:大映
公開:1947年
上映時間:76分

昔、藤村大造が世話になった松川刑事が張り込み中に殉職し、殺した犯人を捜すという話です。今回は多羅尾伴内と名乗るのは、警察葬に行った際に差し出す名刺で一瞬、名前が映るだけで、「地獄から蘇った七つの顔の男、押川広吉。本名、藤村大造だ!」とは言いますが、「ある時は片目の運転手、又ある時は...」という有名な決め台詞はありません。

29分、藤村大造は富豪紳士 押川広吉に化けて、強盗団のアジトと思われるユニオンガーデンのダンスホールへ行き、大盤振る舞いをします。空の手から札を出して、ボーイにチップとして渡します。その後もホステスたちに「零に零を足すと?」と尋ね、「零よ」という答えに対し、「ところが差にあらずですね。いいかね、ここには何も無い零だよ、ここにも何も無い零。この零に零を足すと、ほ~ら」と言いながら空の両手を合わせて札を出し、チップとして渡します。38分、その後、同じ建物の5階にある一味の事務所 福徳商会へずかずかと入っていき、「用事は?」と問われたのに対し「売り物」と答え、「何の売り物」と聞かれると、「手品師、しかもそれは素晴らしい天才」と言い、そこでも空中から札を出します。これらはどれも編集で繋いだカメラ・トリックです。自分が金持ちなのは偽札を作っているからで、一味に仲間してくれと贋造紙幣を見せます。どれぐらい出来が良い贋造紙幣か確認するためには第一映画劇場の横で店を出している占い師の石田巌流に見せればいいと言い、一味がそこへ確認に行くと、待っているのは占い師に変装した藤村大造という、「スパイ大作戦」に出てきそうな欺しのトリックが面白かったです。因みに、藤村はそこでも次の人を紹介し、一味がその人物に会いに行くと、またも対応するのは変装した藤村という忙しさ!そうやって贋造紙幣の出来が素晴らしいことを信じ込ませます。

題名の意味は、一味は7人の組織で、首領は片目が義眼だからです。ストーリーは荒唐無稽で、藤村大造が天来の声により事件解決の糸口を掴むといったふうに、謎解きの面白さはないです。そんなちゃちな変装じゃあ誰が見ても同一人物(片岡千恵蔵)だと分かるはずと観客は突っ込みますが、何と本編では、劇中の人物にも同一人物だと見破られています!又、強盗団が盗むのは、終戦直後、手に入れにくかった砂糖だったり、義眼のことを“入れ目”と言っていたりと、時代を感じさせます。天井が下がってきて押しつぶされそうになる、からくり屋敷の大仕掛けなど、見せ場はありますが、強くはお勧めしません。Amazonプライムでも見られます。大映で作られた多羅尾伴内は4本のみで、その後は東映に移って7作品、作られました。片岡千恵蔵作品はまだ続きます。

参考文献

1) 栗田研:「映像の魔術 十三の眼」『Four of a Kind Vol.9 No.3』(チェシャ猫商会, 2005) p.294


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