タイトルで使われているシックは、Chicつまりオシャレと言う意味ではありません。Simplicity(単純性)、Improvement(改良)、Clear(明快さ)、Knockout(観客をノックアウト)、の頭文字を取ってSICKです。もちろん病気じゃありません。
著者はこれまで「SICK」を目指し改案を重ね続けてきました。その総集編として出されたのが本書なわけです。そそれはもう完成度の高い、当然SICKな作品が揃っているという事になります。
SICK以外の特徴として、多くの作品でギャフの類が使われています。もちろんSICKを実現するための手段としてです。ギャフがうまく使われた現象には、純スライトではかなわない威力があります。効果を求める方は敬遠しないでください。
著者自身も良い仕上がりになったという8冊目のカードマジック作品集。カーディシャンはぜひお読みください。
【収録作品】
私のスタンダップ・エース・オープナー
デックをまぜたりカットしたりしながら、次々とエースを取り出していきます。最後の1枚は観客がストップと言ったところから出てきます。デックを非常にラフに扱えるのが良いところ。その名の通り、スタンダップでできます。トライアンフに続ける方法とエースを5枚見せるサイエンド・フィールドのテクニックも解説しています。
Four Aces Reverse
4枚のエースをバラバラに差し込んでから、デックをリフルシャフルします。デックを広げるとエースだけ表向きになっています。ワンアクションで仕事を終わらせる技法、ステランコのアクション・センター・リバースは必見。
Tow Card Peek Reverse
2人の観客に1枚ずつカードを覚えてもらったら(ピーク)、デックを無造作に表裏ごちゃまぜにしてしまいます。ところが、デックを揃えて広げると向きが揃っており、覚えてもらった2枚だけがひっくり返っています。ここで使われるスロップシャフルは、まざった印象が強いです。
トリプル・カード・リバース・ルーティン
3人の観客にカードを1枚ずつ覚えてもらいます(ピーク)。デックを広げると1人目のカードが表向きになって現れます。ひっくり返っているカードが無い事を確認しますが、再びデックを広げると2人目のカードがひっくり返っています。どうようにデックをあらためた後、3人目のカードがひっくり返ってでてきます。
シンプリファイド・ライプチッヒ
2人の観客にそれぞれカードを選んで覚えてもらいます。そのカードをデックに戻し、軽く混ぜたら観客に手渡します。観客にはカードを1枚ずつ演者の手の上に配っていってもらいます。好きなところで止めてもらいますが、そこから観客のカードが出てきます。2枚目も同じくストップのかかったところから出てきます。
マーローのエース・オブ・スペード・トリックの新手順
「スペードのエース・トリックを見た事がありますか」と言うセリフで始まります。デックを1枚ずつテーブルに配っていき、好きなときにストップと言ってもらいます。そこのカードがスペードのエースなのです。これをもう一度くり返します。
ダイエット・ビジター
バラバラに入れた黒のQが、観客のカードを挟んで見つけます。観客のカードは、テーブル脇によけていた赤のQ2枚の間に移動し、黒のQの間にまた戻ります。原案よりも、位置関係をハッキリさせ、移動に説得力を持たせています。プラスアルファしたエフェクトもあり、全体としてパワーアップしています。
サインド・カード テクニカラー版
青裏のカードをあらかじめテーブルに置いておきます(他のカードは赤裏です)。観客のサインしたカードが2枚のジョーカーの間で消失します。青裏のカードをめくるとサインド・カードになっています。色違いのカードを使う事によって不可能性を高めた作品。
ニュー・クラシック・フォア・エース・アセンブリ
4枚のエースを4ヶ所に表向きに置きます。その上から各エースの上に3枚ずつカードを配ります。3ヶ所のエースが一度に消失し、マスターパケットへ集まります。クラシック・フォー・エースをとことん単純化した作品。
マクドナルドのリピーター
いわゆるひとつのマクドナルド・エーセス。DFカードの導入と消失がスムーズな美しい手順です。DFカードの消失法がボーナスで3種類解説されています。
アルティメイト・オプティカル・エース・アセンブリ
裏模様がそれぞれ異なる4枚のエースを使ったアセンブリ現象。究極バージョンと言うだけあり、キマれば最高の切れ味です。
プログレッシブ・ジョーカーの進化
マニアックなプログレッシブ・エーセスのテーマにありがちなゴタゴタ感を完全に取り除き、今までにないスピード感を実現しています。
オーバーラップ・レインボウ
4枚の赤裏のカードを広げて持ち、トップカードを表向きにしてからデックを揃えます。次の瞬間カードは4枚と表向きになります。さらにそのカードを裏返すとレインボーバックになっています。
4枚の3がA-2-3-4-5に
なんと分かりやすい作品名でしょう。4枚の3を広げて持ち、トップの1枚を裏返します。パケットをとじてから見直すと、4枚とも裏返っています。「実は5枚あったんです」と表向きに配って行くとA,2,3,4,5の5枚になっています。
オーバーラップ・カニバル
「一応完成したと思われるカニバル手順」との事です。その無駄の無さは、たしかにひとつの完成型と言えると思います。
シンプリファイド・インターレースト・バニッシュ
4枚のKに挟んだ3枚のカードが一瞬で消失します。この作品で使われるサトルティはたいへん面白いです。他にも応用できるんではないでしょうか。
デイリー、バーノンそしてトムソーニ~偽の記憶術
観客の覚えたカードを何枚目にあるかをズバリ言い当てます。続けて他のカードの枚数目を言い上げて、マグレでは無かった事を証明します。
ひっくりキングのメンタルマジック風演出
4枚のキングを持ち出し、観客に1枚のキングが裏返っているところをイメージしてもらいます。パケットを広げると本当にその1枚が裏返っています。こんどはカードに描かれたキングが後ろ向きになっているところをイメージしてもらいます。そして再度絵を見るとキングは後ろ向きになっています。さらに残りのキングも全員後ろ向きになっています。
Open Predictionの私風の改案
レギュラーデックを使ったオープン・プレディクション。うまくできればとてもクリーンで不思議な方法です。シックカードを使っていますが、無くてもできます。ピュアリストにオススメです。
クロック・トリックのリニューアル
観客に十数枚のパケットを手渡し、そこから適当な枚数を取ってポケットにいれてもらいます。残りをまぜてからボトムカードを覚えてもらい、そのパケットをテーブル上のデックに重ねてもらいます。マジシャンは、デックをとりカードを時計形にレイアウトして並べ、選ばれたカードと、ポケットに入っている枚数を言い当てます。この古典トリックを格段に不思議にする(可能性のある)アイディアが追加されています。
たしかにシックカードが多用されています。
ギャフカードが好きではない人にはオススメしませんが、抵抗がない人やギャフ好きな人にはオススメ出来る書籍です。
私的には微妙でした。