そのあまりにも若過ぎる才能で、新しい時代を予感させた「 Stella 」から二年。
“新世代”浅田悠介が、「Eternal」でさらに時代を加速させます。
本作に収録されているのは、すべてがクラシックの改案です。アイディアの出尽くされたプロットに、これ以上の進化は望めるのでしょうか。
”見たことがあるはずなのに、見たことがない”
あなたは、そんな感覚を想像できるでしょうか。
”既視感と新世感の倒錯”
そう、それはまさに知的な叫び。
あなたは、そのエネルギィに圧倒されることでしょう。
”自分でなくとも、誰かがつくっていた”
それが創作だと言えるのでしょうか。
並べかえること?
塗りなおすこと?
重ねあわすこと?
形をこわすこと?
そんなものではないはずです。
”自分がいなければ、永久に存在しなかっただろう”
これこそが本当の創作だとは思いませんか。
「Eternal」は、DVDとノートがセットになって一つの作品集です。映像と文章の二つで、あなたの心を侵食します。
マジックに対して“何か”を求めていて、それが“何か”わからない人にこそ手にしてほしい作品集です。
プラチナム・リセット
AとKのダイレクトな入れ替わりのあとで、リセットを行います。特にリセットにて使用されている工夫が独創的。今まで見たことのないリセットの“改案”がここにあります。
H.G.Wells
サインドカード現象。四枚のAを使わずに、二枚のジョーカーでこの現象を行います。時間移動のみにスポットを当てるように組み立てられており、とてもスリムに見えます。
訪問者の記憶
デックを分割することなく、移動先にはQを二枚だけ置いた状況でビジターを行うという試み。難易度も高く、トリッキィな仕上がりです。ここで使われている、パームを使った“テーブルドサンドイッチムーブ”の日本語解説は嬉しいところ。
ASADA4A Opener
手に広げたカードの中から四枚を観客にタッチしてもらい、マジシャンはそれをアウトジョグしていきます。そしてその四枚を見てみると全てAです。ここで使われているチェンジ技法も、好き嫌いは分かれそうですが面白いと思います。
盲目コレクト
コレクターズ現象。表向きはよくあるコレクターズですが、盲点をついたある策略が使われています。浅田流リフルフォースも解説。
未完コレクト(解説のみ)
コレクターズの試作型。盲目コレクトとは原理が異なります。こちらでも面白いアイディアが紹介されています。
水と油絵
四段からなるOil & Queenのルーティン。あるアイディアにより、ラストの絵札を出現させるために、それまでのOil & Waterが制限されるということが無くなっています。オチまでの三段は、通常のOil & Waterとして好きに活用できます。
True Fly
スリーフライですが、なんとノーエキストラ・ノーギミックでこれを行います。非常に理論的に構成されており、これしか正解がないのではとすら思わされます。一見の価値ありでしょうか。
まどろみ消去
三枚のコインの消失と出現のトリック。観客から見て無意味な動作を、極力排除するように作られています。見た目にとてもシンプルに仕上がっています。ソフトコイン使用となりますが、優雅で楽しめます。
Stella Flash 2(解説のみ)
浅田のノーエキストラでのチンカチンクの更なる追求です。前作「Stella」収録の、四枚のコインが一気に集まるFlashのセカンドバージョンです。アイディアの紹介のみとなります。
Stella Reverse
一か所に集まった四枚のコインが、一瞬で四隅に戻ります。もちろんこれをノーギミック・ノーエキストラで行います。「Stella」ではフォローされなかった現象で、この解決法には本当にセンスを感じます。「Stella」に魅せられた方は必見です。