コンパクトながら良作の詰まったジョン・ガスタフェローの作品集です。
名著『ワン・ディグリー』を読んだ方なら、ガスタフェローの魔法はご存知でしょう。彼が施すわずかな改良は、カードマジックのインパクトを一変させてしまいます。本書もまたその路線の延長です。狙いは2つ。ちょっとの改善でマジックを強烈にすること、そして魅惑的な演出で観客を心をつかむことです。
本書では、演出のうまさが際立っています。彼の演出は、もちろんエンタメ性を高めるものでもありますが、それと同時に、手順の簡略化を可能にしたり、手順上の弱点を長所に変えたりする働きもあります。彼の工夫は、本当に一工夫なのですが、決定的な違いを生むのです。そのセンスにうなってください。
収録作は比較的簡単で、解説も写真が豊富にあって丁寧です。すぐ覚えられ、即戦力になるでしょう。
魅力的にアレンジされたすてきなトリックをどうぞ。
アメリカでブック・オブ・ザ・イヤー2010に輝いた名著が日本語になりました。
テーブルホップに最適な3品のコースメニュー
Virus
カードマジックを始めようとしますがデックは、カードの表が裏模様になってしまい、次に真っ白になります。デックの中にウィルスがあるのを見つけ、取り除くと、正常なデックに戻ります。エキストラカードが、演出上、隠す必要がなくなっているので、強烈な効果が楽に得られます。
Upper Hand Triumph
カードを選んでもらい、戻してデックを裏表で混ぜます。ここからマジシャンは選ばれたカードを言い当て、その向きも当て、その位置でカットします。さらには、ごちゃ混ぜの状態でデックを手渡し、手を触れずデックの向きを揃えてしまいます。トライアンフの手法としてはオーソドックスですが、ハンズオフ感により不思議さが絶大になっています。
Mini-Mental
4人にデックの中からそれぞれカードを覚えてもらいます。そして1人ずつ心を読んで言い当てて、カードをデックから鮮やかに見つけ出していきます。コンパクトなマルチプルセレクションですが、言い当ててから取り出すことで、見応えが生まれ、またそうすることマルチプルセレクションにありがちな観客のカード忘れがカバーできます。演者にも観客にもやさしくしつつエフェクトを高めるアイディアはさすがです。
カードケースを使った3トリック
Boxing Day
4 Boxing Day
1枚選んでもらいデックに戻します。デックを放り投げるとそれがカードケースに変わります。そのなかに選ばれた1枚が入っています。カードケースにちょっと細工をすることで完全なイリュージョンが可能になります。
Box Whisperer
カードケースの中に選んだカードの名前をささやいてもらいます。マジシャンはその箱に耳を当て、選ばれたカードを言い当てます。そして、空だったカードの箱の中から選ばれたカードが出てきます。演出の力を思い知らさせる一品。
Think Tank
4枚のエースのうちの1枚を心に思ってもらいます。2枚のジョーカーをカードケースに入れますが、いつの間にか4枚のエースが2枚のジョーカーになっています。カードケースを開けると、中には4枚のエースが入っており、思ってもらった1枚がひっくり返っています。ヘビーな現象ですが、驚くほどライトな手順になっています。
4エースを使った4トリック
All In Your Hands
2人の観客にデックをシャフルしてもらい、カットしてもらいます。最終的に4つの山ができますが各山のトップがどれもエースです。カードを手渡してから完全ハンズオフになるスペクテイターカットエーセス。究極形のひとつだと思います。
Chip Off the Old Daley
赤いポーカーチップと黒いポーカーチップの位置が入れ替わります。次に、より難しくするため、赤いチップを赤いエースで、黒いチップを黒いエースでカバーして入れ換えると言います。するとポーカーチップの位置は入れ替わらず、エースのほうの位置が替わってしまったのです。ラストトリックの前段でコインマジックをするという奇抜なアイディア。それによりオーソドックスなラストトリックが非常に意外なものになります。
Double Agent
1枚選んでもらいデックに戻します。4枚のエースをデックにバラバラに入れた後に、華麗に取り出します。4エースに向けてデックをリフルすると、選ばれたカードがその中に現れます。
Flash Pocket
観客に4枚のエースを持ってもらい、4枚のジャックを別々のポケットに入れます。ここから観客の持っているエースが一気にジャックに変わります。ポケットからはそエースが出てきます。