私には天才と呼べる2人の友人がいます。ドクター澤とフレッド・カップスです
ダイ・バーノン
澤浩の作品集が出ました。代表作が収録されているだけではなく、それらを生み出す澤メソッドが明かされます。
第1部では、澤作品の中から著者である宮中桂煥が21作を選出し解説しています。本物の創作というものをご覧ください。澤がいなければ永遠に生まれないであろうアイディアが、それぞれの作品ではっきり見て取れます。澤作品はどこまでもユニークであり、しかも時代を超えて愛されるクラシックのクオリティを備えています。
どうして澤からはそんなアイディアが出るしょうか? 彼が天才だから。もちろんそうなのですが、それがすべてではありません。澤のマジックはある種の発想法から生み出されており、そのプロセスは多分に機械的です。その手法は誰にでもすぐに利用でき、ひとつの事象に対し幅広い視点や可能性をもたらします。それで即完成品になるわけではありませんが、無数の糸口を与えるこのメソッドは、マジックのみならずあらゆる創作活動において有効です。第2部では、澤と交流のある社会心理学者の小坂井敏晶が、澤メソッドについて、緻密な分析を入れつつ体系的にまとめます。
第3部では参考資料として澤が過去に発表してきた作品を載せています。エフェクトのアウトラインが一通り読めるので、文字通り参考になります。澤作品は現象を読むだけでもエキサイティングです。
DVDが付属しており、マジックライブの映像を中心にいろいろ入っています。パーソナリティを含めた澤タッチが理屈抜きに楽しめます。
澤の魅力が凝縮された1冊です。日本が誇るレジェンドの世界をご堪能ください。
10年ぶりとなる本格的なDVD。
ドクター澤こと、澤浩さんの作品を集めた本です。
初めに書いておきますが、この本を読んでもレパートリーが増える事はまずないでしょう。何せ「こんな準備不可能!」な作品ばかりなのです(サブマリンコインは行けるが、決してあの作品を単なるコインズアクロスにしてしまうなかれ)。これは、澤さんが自分のために作った手順を解説したものですから、これを演じられるのは澤さんだけなのです。仮に道具だけ揃えて同じ手順を追ったとしても、澤さんの演技とは似ずして非なるものとなるでしょう(人、それを「別物」と言う(笑))。
これは、レパートリーを増やすための作品集ではなく、澤さんのマジックに対する考え方、創作の視点などを学べる本なのです。その意味で「人前で演技をする」事が好きな方なら、「マジックをする上で大事な事は何か」を、澤さん本人から学んでいる気になれる事間違いなしです。
付録してDVDがついてきて、自宅で演技する澤さんや、澤さんの日常風景を見る事ができます。たんぽぽの綿毛を、少年のような表情で見つめる澤さんを見ていると、もしかしてこれこそが澤さんのマジックの原点なのではないかと思いました。角砂糖とティーカップでカップアンドボールをやる澤さんの演技を見ていると、プレゼンテーションの大事さを痛感すると共に、単なるテクニック自慢では、こんな演技は絶対出て来ないなと感じさせられました。
装丁も立派でサイズも大きいので(大き過ぎて携帯には不適(笑))、永久保存版と言える1冊だと思います。