原著は“MAGIC& MEANING”1995年刊、2009年に第17章の「会話編」を加えた増補版が、いずれもスティー ブン・ミンチ(Stephen Minch) 氏が経営する出版社、HERMETIC PRESSより発行されました。 現在は増補版も絶版であり、アマゾン等の中古市場では、10万円前後の高値で取引されている状況です。 尚、本書の版権は、現在はペンギン・マジック (Penguin Magic, Inc.)が保有しており、当日本語版は、同社の許可を得て500部制作されています。
仕様: 原著は、 全224ページ、 サイズは150mm×225mmでB5版より一回り小さいサイズ (日本式に言えば 「菊判」に近いサイズ)で、厚さ22mm、 重さ513gです。 日本語版 は、全275ページ、サイズはA4版で、厚さ28mm、 重さ1,200gです(いずれも誤差を含みます)。 本文には写真14点、 図46点、 表5点が含まれています (写真は「訳者 あとがき」に1点加わり、 原著より1点多い)。 ハードカバー。 ダストカバー付き。
本書は哲学的であるので、受け取り方は様々。 僕は、「マジックという枠には背景があり、 個々のマジックにも背景がある。 それらを理解すること、 または創りあげることによって、 マジックは魔法へ昇華させることが出来る」と理解。 あなたのマジックに向き合う為に是非一読を。 因みに読了まで二カ月を要しました。 また、田代茂氏は訳注の細かさといい、 よくこの本を翻訳、出版してくれたなと。 偉業です。再版はないと思うので、今、本棚に加えた方が良きかと。
Dr.レオン(ヒロ・サカイ)
★『マジックと意味』、このタイトルの「意味」がわかると、多くのマジシャンは次のステップに踏み出せることでしょう。
★悩めるマジシャンにとって、本書はブレイクスルーを起こす切っ掛けを与えてくれます。
★本書を日本語で読めることは私だけでなく、すべての日本人マジシャンにとって「福音」です。
★マジック関連の読み物として、これだけ役に立ち、おもしろいものは他にありません。
三輪晴彦(マジェイアの魔法都市案内)
この本では、ダイ・バーノンのツイスティング・ジ・エーセスとカッティング・ジ・エーセスの大きな違いを指摘しています。一方は観客の心の奥底に響き、他方は全く響かないとの厳しい指摘です。それはどういうことでしょうか。
思いやりのある人物であっても、マジックを演じると無礼で嫌なやつになりかねないとは、なぜなのでしょうか。多くのカードやコインのクロースアップマジックは自己満足的であるとの厳しい指摘もあります。また、演じたマジックがどうなっているのか、観客に考えさせてしまう点の問題もあげています。
マジックの核心部分にあるものは何なのか。マジックとは、その起源は、なぜこの世に生じたのか、マジックが象徴しているものは、どのような意味が隠されているのか。マジックの演技とは「エンターテイメント」なのか。自分のマジックにどのような意味があるのか。
その答えを見つけ出すために、マジックの起源を取り上げています。20世紀には数冊のマジックの歴史書が発行され、マジックの起源について書かれていますが、いずれに対しても痛烈な批判をしています。文字も文明もなかった古代のことを、科学が発達した20世紀の上から目線の考えで解釈していたからです。あまりにも有名で再販を繰り返したミルボーン・クリストファーのマジック歴史書に対しては「的外れ」との特別に厳しい批判です。他分野では古代の研究が進んでいる中で、マジック書の歴史記載が古いままの問題を指摘されていました。
呪術師のマジック、初期のマジック、マチネー(昼興行)のマジック、トリックスター、寓話的マジックについてなど、例をあげて書かれています。そして、7つのマジック作品も解説されますが、その中の3つは日本人にはなじみの薄いゴスペルマジックです。それを分かりやすく興味深い作品として紹介されていました。
この本の著者の一人がユージン・バーガーです。1978年にプロ活動を始めて以来、クロースアップマジックのトップスターとして活躍され、マジック発展にも貢献されてきました。心に響くマジックを追求されてきたと言っても過言ではありません。もう一人がロバート E. ニールです。トポロジカルマジックやトラップドアの解説書に始まり、その後も多数の独創的なマジック書を発行されている目が離せない一人です。彼は牧師でもあり、24年間も宗教心理学の教員として活躍されていた経歴があります。初期のマジックやその後のマジックに関しての興味深い視点で書かれています。
2015年の日本語版製作の承諾を受けてから日本語版完成までに9年も経過していました。読者の知性を刺激するために詩のような言葉で綴られていた部分も多く、一語一語を吟味しながらの訳文を作り上げる作業は大変であったと推察できます。また、古今東西の文学的文章が多数引用されており、その翻訳作業や禅宗に関する記載部分も、多くの方々の指導を受けられていました。お二人の著者は多数の著書を発行されていますが、その中でも原文で読んで理解するのは大変な著書であり、その日本語版がやっと発行されることになりました。
マジック理論書が多数発行されていますが、理論書とは違う視点の価値があります。この本の目的が、特定の意見や見方を押し付けるものではないことを強調されている点も好印象が残りました。手順、演出、話し方、観客に対する態度などを、マジシャンが心をこめて考え直してみるよい機会になるのではないかと期待しています。
石田隆信(フレンチドロップ『石田コラム』著者)
「ものすごく不思議な魔法を見せたマジシャンが、次の瞬間、低俗なギャグを言って自らの世界をぶち壊してしまう。彼は不思議を演じたことを恐れている」。
卓見です。マジシャンの不用意な言葉がマジックをみすぼらしいものにしている。 そのことを具体的に語り、マジシャンの心の奥にある闇まで解説しています。 目から鱗の理論書。
藤山 新太郎
「ムーブ」に気付かれたら、マジックは殺される(本書中の言葉); 生き残れる本物の魔法を目指したいと思った。
二川 滋夫
マジックの価値を理解して、それを観客に伝えるために。マジックがどれほど尊いものなのか、考えてみたことはあるでしょうか?
マジックはただの演芸でもなければ、その場しのぎのお慰みでもありません。本書では、マジックが人間の生命や精神と深くつながってきたことが、 (そして現在でもつながっていることが、) 数々の事例を基に示唆されていきます。太古の人々の生活を探る文化人類学の調査、聖書の一節、カフカの小説にまで言及され、日本の文献として一 休禅師の言葉までが引用されています。日本語訳にあたっては、緻密な文献調査のほか、各分野の専門家の意見を伺うなどして、正確な翻訳に努めました。
マジックには極めて重要な意味が込められています。演者自身がそれを体現し、演技を通して観客に伝えられた時、そのマジックは観客の心に確実に刻み込まれることでしょう。 本書で解説される7つのマジックは、観客の心に届くマジックを演じるという著者の狙いを形にした、わかりやすい実例となっています。初心者から専門家まで、本書を読まれることでその方なりの新しい視界が開け、進むべき道が自ずと明らかになってくることに疑いはありません。
田代 茂
“Magic & Meaning is an important book for magicians, but its thoughts have been appreciated only by those who read English. This is partly because its ideas are subtle and challenging to translate. Dr.Tashiro Shigeru has shown the skill and determination to make such a translation, staying true to Burger and Neale's message. His translation is an achievement that deserves the attention of any Japanese magician who cares about the magic he performs and the audiences he serves. ”
「マジックと意味」はマジシャンにとって重要な本ですが、その内容は英語を読む人たちだけのものでした。 その理由のひとつは、本書の思想が繊細かつ難解で翻訳が容易ではないからです。 田代 茂氏はその能力と信念のもと、バーガーとニールの言葉を忠実に再現しつつ、その翻訳を堂々完成されました。 彼の翻訳は、自らの演じるマジックと自らが対峙する観客とを大切に思う日本のマジシャンならどなたにとっても注目に値する成果といえます。
Stephen Minch
以下の通り。「第13章」は存在しません。第7章、第8章、第10章、第12章、第14章は、マジックの解説が含まれています。 第12章には3つのマジックが解説されているため、 本書では7つのマジックが解説されていることになります。