スベンガリの最新巻第27号が発行されました。
大阪奇術愛好会・IBM大阪リングと言えば奇術クラブの名門です。
1950年代から現在まで70年以上続き、日本を代表するような研究家や石田天海賞や厚川昌男賞を受賞するようなクリエイターを含む奇術エリートが多数在籍しています。
最近では若手への門戸も大きく開かれており、業界で注目を集める若手も数多く出入りしています。拡大路線を取る、由緒正しき怪しい集団です。そんな個性豊かな愛好家が集まり、全体として様々なジャンルで、様々な角度から、様々に研究された作品で奇術家同士を楽しませ合っています。
そんな大阪奇術愛好会・IBM大阪リングの機関機第27号です。今回も各演者が自分の得意とする研究分野で、奇術師を意識した深い研究のもとに完成した自信作が揃っています。トリック14個、エッセイ5個と読み応えのある内容、これで2,200円はお買い得過ぎます。
- Twice Dice
- 谷 英樹
- 数理トリックですが、2段構成により数理的にあり得ないことが起こっているように見せた手順です。
- ゴッドハンド Ver.2.1.
- 前野 隆夫
- 天才ルーバー・フィドラーの「ゴッドハンド」をより現実的に演じやすくしたもの。
デックケース上で演じられます。
- 奇妙な一致
- 岸本 道明
- 演者が後ろを向いている間に♢、♣、♡、♠が書かれたメモ用紙から、裏向きのまま1枚を選んでもらいます。
1~Kの間で1つの数字を選び、その数字を選んだスートの紙に書いてもらいます。スートが書かれた4枚の紙は封筒にしまってもらいます。マジシャンは1~Kが書かれたメモ用紙から1つを選び、1つのスートを書き込みます。
先ほど封筒にしまった紙を取り出すと、観客が選んだスートと数字の組み合わせがマジシャンが選んだ組み合わせと一致しています。
- Twilight of the JOKERs
- とうそん
- カードを切ったり折ったりせずにカードを簡単に変化させるギャフを利用し、カード当てと絡めて手順化したものです。
- Cash Cards
- 青山 健一
- カードに書いてあるイラストが現実の物体になるがコンセプト。4枚のカードに500円玉のイラストが描かれています。そのうちの1枚を裏向きでテーブルに置きます。残りの3枚のカードにおまじないをかけると、カードに描かれた500円玉が次々と消えていきます。消えた500円玉は初めにテーブルに置いたカードに移っています。ラストはそのイラストが本物の4枚の500円玉に変化します。
- The Economizer's Dream
- 中村 良典
- 3枚のコインで行うマイザーズ・ドリームです。3枚のコインを使用するマジックに繋げられます。
- Out of the half-world
- Yuji村上
- ポール・カリーの名作「Out of this world」のアレンジ。セットアップ無し、シャッフルしてもらったデックで演じられます。
- Tosheroo three
- 山崎 真孝(CULL)
- 3段階からなるコイン・カットです。借りた500円玉にサインをもらいます。1枚のカードを選んで覚えてもらい、デックの中央に戻します。観客のカードではないところでデックをカットしコインを置いて残りのデックを乗せて揃えます。再びコインの位置でカットすると、選ばれたカードに変わっています。
次に裏向きのデックに選ばれたカードを表向きにして、戻します。適当なところでカットし(もちろん観客のカードではありません)コインを置きます。しばらくしてデックをカットすると、コインの下に表向きに選ばれたカードが出てきます。
最後は表向きで客のカードを中央に戻し、デックをテーブルに置きます。その上にコインを乗せ、デック上で手をかざすと、コインの下に表向きの選ばれたカードが現れます。
- ハイテク時代のローテクマジック (別題: ハイテクをぶっ飛ばせ)
- 福井 哲也
- 古典的な方法にもかかわらずハイテク機器の介在を疑ってしまう可能性も秘めた現象です。
- 貧乏財布と金持ち財布
- 庄野 勝吉
- 貧乏な財布とお金持ちの財布という演出。WX風の瞬間的な1枚のコインチェンジと、手に握った複数枚のコインチェンジが同時に楽しめます。
- ニック・トロスト・絵札セルフワーキングの研究に
- 石田 隆信
- 「マッチド・ピクチャー・カーズ」の改案。セットを表向きで、オープンに混ざっていることを見せながら行う方法です。
- ちょっと不思議な昔の紐の手品 (ちょっと気の利いた「奇術師の選択」とともに)
- 福井 哲也
- 知らなければ必ず引っかかる不思議な紐の手品。昔ながらの紐を再考、巧妙なマジシャンズ・チョイスとともに紹介します。
- 清明ディバイド - 不完全なマルティプルアウト・トリック
- 佐藤 興二
- マルチプルアウトで失敗の確率が2割弱あるが、成功した場合には観客に大きな驚きを与えられる場合、演じる価値があるかというのがテーマです。
佐藤総、「陰陽ディヴァイド」の拡張版というべき数理トリックが紹介されます。
- 真夜中のチェシャ キャット(7)
- 赤松 洋一
- 続・ダイス・チューブ
- 空のチューブにウォンドを押し込むと、1個ずつ4個の異なる色のダイスが出現します。
- 衣装のはなし
- ゆみ
- 文化の違いにより、衣装の色も考える必要があるというパフォーマーならではのお話です。
- FISM Qualified Contest (FISMQC)
- 瀬島 順一郎
- FISMの仕組みに関する詳細な情報です。
- 「ルポール」を想う
- 宮中 桂煥
- マジックに対するルポールの考えを紹介します。良い奇術に必要な要素は何か。一流になるために最低限何が必要かなど。
- 続・てじな徒然草
- 福井 哲也
- IBM所属の手品を見せてくれないマジシャン2人の紹介とその考えを推測。
ラリー・ジェニングス、マックス・メイビン、タマリッツ、デビッド・ロス、ケン・クレンツェル、ブルース・サーボン、ジェリー・アンドラス、松山光伸、松田道弘、モハメッド福岡、赤松 洋一、澤浩、宮中 桂煥といったマジシャンをエピソードを交えつつ紹介します。
Fukui's Toss Vanishについて
技法における論理的整合性について
Sam HuandのCrazy Sam's Handcuffsについて
ハイパーカードの持つ不可能性の質をグレードアップさせたバリエーションについて
- 根本毅さんとアメリカ・マジック大会同行の想い出
- 石田 隆信
- 1981年、1985年、根本さんと石田さんが行くアメリカ西海岸PCAM大会、カンサスシティーIBM大会。デル・レイの話や、根本ささんの人柄がわかるエピソード満載です。
- 編集後記