初めて、師の演技を観たときの衝撃を、未だ忘れることが出来ません。
既にそれなりにマジックの知識や経験を持っている(と思い込んでいた)当時でしたが、
それにもかかわらず、映像中の観客たちと同じように、笑い、驚き、
しまいには「マジックって、こんな面白かったのか!」と打ちのめされました。
このDVDも、字幕版の出る前から幾度と無く観返していたのですが、
日本語訳のおかげで、今回ようやく師の演技の"秘密"を知ることができました。
(スクリプト・マヌーヴァさんに感謝です)
なんとなく、ただぼんやりと眺めるだけだった一挙一動の全てに
師のあらゆる考えが詰め込まれており、
それによってマジシャンをも魅了する作品が創られているのです。
師のマジックを生で観ることができなかったのが、本当に悔しいと感じます。
『Tamed Card』で語られるマジックの"枠組み"の理論を、
『Two Cup Routine』に用いられている巧妙極まるミスディレクションを、
『Deja Reverse』で魅せてくれる感情のこもった演技力を、
『Nest of Box』の現象を実現させるために注がれた恐るべき執念を、
一人でも多くのマジシャンに学んでほしいと願わずにはいられません。
この人は現代風に言えば、オーラがありますね。ちょっとしたことで、ものすごくお客さんが沸いています。
手順も決して込み入ったものでもなく、難易度も高いものではありません。しかしそれでいて、不思議でおもしろいなと感じます。
有名なカップアンドボールのツーカップルーティーンが収録されています。しかし私が一番気に入ったのは、ワイルドカードの手順ですね。ストーリー性も面白いし、マニアから見ても、本当に変わっている感じがして不思議でした。しかもそれほど難しくないです。
収録マジックも少ないですし、レパートリーが増えるという代物ではないですが、余裕があれば見ておくとためになると思います。これぞ名人芸という感じです。